ノウハウ集

Topics

2018.3.12更新

第一章 医療業界のコスト削減事例

第6回:診療材料費削減の進め方

 今回から、診療材料費の削減方法を具体的に紹介していきます。ここでいう診療材料費とは、治療のプロセスで消費される医薬品以外の医療用物品のことです。例えば、人工関節のインプラント、冠動脈ステント、注射器、ドレープ等々です。管理会計的には変動費に該当し、急性期病院など診療材料費が大きくなる病院では優先して取り組むべき領域です。こちらの記事で詳しく説明しております。

第4回:病院機能によるコスト削減戦略の違い②~急性期と慢性期~

診療材料費の削減活動は大きく、「分析フェーズ」「戦略策定フェーズ」「実行フェーズ」の3つに分かれます。

 

 

 

分析フェーズ

①パレート分析で、コスト削減に取り組む領域の優先順位をつける

 まず、購買データをもとにパレート分析を行いましょう。領域別に購入金額と購入数量を算出し、購入金額の降順に優先順位をつけます。例えば、500床台のA病院の診療材料費を分析すると、上位6領域で全購入金額の8割を占めます(下図)。まずは「この購入金額上位6領域と、他領域で購入金額の高い個別品目」の優先順位を高くしてコスト削減に取り組むということになります。

 

②同種同効品を整理する

 次に、領域別に細かく分析し、同種同効品をまとめます。A病院が購入している循環器領域診療材料のうち、例えば冠動脈ステントは4社から5品目購入しています(下図)。これらは全て同じ目的で使用されるものです。

 なお、無数にある診療材料を領域別・用途別に分類するためには、マスタが必要になります。現在、数社からデータベースが提供されていますので、それを活用しましょう。コスト削減活動は、必要な情報を分析可能な状態で不足なく準備するところから始まります。

 

③市場価格を把握する

 診療材料はかなりクローズドな取引となる傾向があり、市場価格競争やボリュームディスカウントがあまり機能していません。これは診療材料に専門品も多く、市場価格情報を病院が入手困難であることが要因です。逆に業者はその実態を前提として見積金額を出しますので、コンサルタントを活用して適正な市場価格を把握することは交渉の大きな武器になります。業者から「貴院だけには特別価格で納品します」と甘い言葉を言われても、そもそも市場平均価格からかなり高く乖離している場合があるので注意しましょう。また、市場価格を把握できればコスト削減ポテンシャルも算出できますので、交渉の効率・成功率も上がります。

 

 

戦略策定フェーズ

①医師・看護師と院内調整を行い、作戦を立てる

 特に購買部などの事務スタッフがこのステップを踏まずにディーラーやメーカーに交渉を持ち掛けても、失敗する可能性が高くなります。なぜなら、診療材料を実際に使用する現場の医師や看護師と業者が裏で手を握っていれば、業者は交渉に応じる必要がないからです。まず医師・看護師と院内調整を行い、コスト削減の目的、対象の品目、進め方について同意を得ましょう。なお、普段から密室で業者の営業を受けないよう医師・看護師に周知しておくことも大切です。

 

②標準化・メーカー切り替えが可能か

 診療材料費削減では、「標準化・メーカーの切り替えが可能か」の視点が重要です。例えば、上記A病院の冠動脈ステント領域では、現在最もシェアの高いW社A製品に集約できないかどうか、もしくは他社でもっと市場価格が安い製品があれば、そのシェアを増やすことができないか、が院内調整の際のポイントになります。具体的戦略の院内同意がとれたら、実行フェーズに移ります。

 

実行フェーズ

①役割を明確にして業者と交渉する

 私がコンサルティングをする際、よく病院スタッフに、「業者と交渉する時は役者になってください」と言います。チームメンバーが各役割を演じて、交渉が有利な雰囲気を作っていくのです。大まかなおススメ役割分担は、院長や事務長などの経営層は、完全悪役に徹して業者にプレッシャーをかける立場、購買部担当者や現場のリーダー(診療部長や看護部長)は業者と近いので、協力を求める立場をとるのが良いでしょう。

②メーカーに価格決定権があることを認識する

 多くの病院は地元の卸売業者(ディーラー)を通して診療材料を購入していますが、一般的にディーラーは薄利多売であり、価格交渉に応じることは難しいことを認識しましょう。価格決定権は販売元であるメーカーにあります。ディーラーは病院側の味方になってもらい、代替品の提案などでコスト削減の協力をしてもらいましょう。

 

 

 各領域には、各フェーズで押さえておくべきポイントがありますので、次回からは領域別に具体的な紹介をしていきます。

関連記事

<戻る

ページトップへ