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2018.7.23更新

第一章 医療業界のコスト削減事例

第25回:病院における業務改善の進め方

病院が人で成り立っていることは事実ですが、最大コストである人件費の適正化は病院経営において避けて通れない課題です。人件費削減といえば、例えば採用抑制や賞与カット、委託への切り替えといった施策が思いつきますが、中長期的な人材育成への影響や、スタッフのモチベーション・帰属意識の低下というリスクも伴います。よって、病院の人件費適正化を考えるうえでは、「生産性向上」、つまり、限られた人数と時間でいかに収益を生み出すか・残業を減らすかという視点が非常に重要になります。

 

直接業務と間接業務の切り分け

生産性を図る指標の一つとして「職員一人あたり医業収益」を病院間で比較すると、高い病院では約2,500万円、低い病院では約1,100万円と2倍以上の差があります(下図)。この差が生じる要因の一つとして、業務の種類に着目します。

 

 

病院の業務は全て、収益や医療の質に直結する「直接業務」と、そうでないが病院を運営するために生じる「間接業務」に分類することができます。間接業務が多いと直接業務を圧迫し、収益が上がらないばかりか残業時間の増加や医療の質低下を招きます。間接業務を減らし、直接業務を増やすように業務改善を行うことが生産性向上の基本的な考え方です。

 

 

業務改善の進め方

成功する業務改善の進め方は、大きく4つのステップに分かれます。

 

STEP1:業務改善の目的・目標を定めて関係者に共有する

現場は「出来る限りのことはやっている」、「人を増やすしか方法はない」と感じていることがほとんどですので、まずはなぜ業務改善をするのか、目標は何なのかを共有し、協力を得る必要があります。例えば、薬剤部に対し、「病棟薬剤業務実施加算を取るために、現在の人員で1名分のマンパワーを作りたい」とすれば、単純に「業務改善をしよう」と提案するよりも前向きな議論ができます。

 

STEP2:業務を見える化する

主観的な議論を避け、改善対象業務の優先順位付けや改善効果を定量化するために重要な工程です。まず、業務の棚卸を行い、対象部署の業務を漏れなくリスト化します。その際、各業務が「直接業務」なのか、「間接業務」なのかが区別できるようにすると良いでしょう。その後、業務量調査を実施し、集計・分析することで、業務量が定量化され、誰がどの程度の業務を行い、どの業務にどのくらい負荷がかかっているか等が把握できるようになります。

 

STEP3:業務改善の優先順位をつける

業務が見える化されたら、改善に取り組む業務の優先順位付けを行います。下記3つの視点で優先順位を決めると良いでしょう。

  1. 投入時間の大きい業務であること
  2. 間接業務であること
  3. スタッフが「課題がある」と感じていること

 

STEP4:改善の方向性と具体策を検討する

改善の方向性としては、一般的に4つの視点があります。

  1. 排除 :その業務はなくせないか?
  2. 結合と分離 :同時にできないか?別々にできないか?
  3. 入れ替えと代替 :順序やタイミングを変えられないか?
  4. 簡素化 :もっと単純に、簡単にできないか?

 

原則、最も効果が大きい「排除」をまず考え、次に「結合と分離」または「入れ替えと代替」、最後に「簡素化」の順で改善策を出していきます。簡素化はアイデアとして出ることが多いですが、「自動化」や「システム化」など、一件もっともらしいが安易な策になってしまうことが多いため、最後に検討します。

 

STEP5:実行と成果検証

具体策が決まったらスケジュールに落とし込み、改善を実施します。その後成果のモニタリングを行い、当初の目的が達成できたかどうかを検証します。

 

一連の進め方のなかで、STEP4「改善の方向性と具体策を検討する」が業務改善の成功の鍵を握ります。次回以降、実際の事例ももとに、様々な視点で業務改善策を紹介していきます。

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