今回は戦略策定フェーズの『アクションプラン作成』について見ていきます。
アクションプラン
これまでのステップで作成したコスト削減施策について、関係者との合意形成を行い、アクションプランに落とし込みます。その際、「誰が」、「何を」、「いつまでに」やるのかを明確にします。ここにフォーマットの例を示します。
アクションプラン作成時のポイントは、施策ごとに、
「誰が」:責任者
「何を」:実施内容、目標値
「いつまでに」:対応時期
を明確にすることです。
戦略は実行されてこそはじめて価値が実現するものです。絵に描いた餅にならないためにも関係者間で行動を促し合うことが必須となります。この「誰が」「何を」「いつまでに」を明確にするという作業は「人は一般的に注目されることを好み、誰かに見られている(見られていると思う)と、成果を上げようと行動に変化が起きる」というホーソン効果を利用しているとも言えるでしょう。
ホーソン効果
上でも触れましたが、ホーソン効果とは、「注目を浴びることで、相手の期待に応えたい心理的行動によって好結果を出す効果」のことです。ホーソン効果は上述したアメリカのウェスタン・エレクトリック社ホーソン工場で行われた実験(ホーソン実験)によって発見されました。しかし、ホーソン実験は元々このような効果を期待したものではなく、環境条件を変えれば効率的な作業ができるようになるという仮説のもと、どんな作業環境が最適であるかを調査するための実験でした。
最初の実験で照明の明るさを変更したところ、薄暗くて手元が見づらい環境でも作業能率がほとんど変わらず、むしろ能率が向上しました。このような予想外の結果から、次に作業員に対して休憩時間や給与といった労働条件を悪条件に変更したところ、それでも能率が向上しました。
一般的に悪条件になれば作業能率は低下すると考えられます。しかし、ホーソン実験はハーバード大学による実験であったのです。グループのメンバーは、日々の業務とは違い、有名大学の実験に参加するという非日常な環境下でした。また、実験目的について知らされていました。そのため「ハーバード大学に協力している」「特別に選ばれて参加している」といった意識が働き、悪条件でもモチベーションがアップしたことで作業能率が向上したと考えられています。
また、実験の中で、作業の監督者の態度と関わり方でも能率に違いが出ることも発覚しました。関係性が良好になることで「期待されている」と感じるようになり、行動が変わることで結果的に生産速度・作業効率の向上につながっていきました。ホーソン実験では、開始前は違う結果を想定していたものの、想定と違う結果が続いたことで、人間は感情によって行動変容し、想像を超えるほどの結果をもたらすことを発見できたのです。