病院は一般的に届出病床数に対して必要看護師数を配置します。日本の診療報酬制度では患者数の変動によって看護師を増減させることは難しく、人件費は固定費となります。そのため、稼働をいかに高く維持するかが黒字経営のポイントになります。損益分岐点となる正確な稼働率は病院によって異なりますが、各病院の病床機能によって概ね目標とすべき稼働率が存在します。急性期であれば90%、回復期・慢性期では100%を維持したいところです(下図)。一方、急性期で85%、回復期・慢性期で90%を切る稼働だと、利益を計上することが難しくなります。
将来的な適正病床数は、都道府県の医療計画や地域医療構想を前提にしたうえで、自病院の年間患者数と平均在院日数の2軸で考えることができます。
年間患者数の推測
内部環境では医師数の増減、外部環境では医療圏の人口動態や競合の動向が年間患者数の主な影響因子となります。特に人口動態は重要かつ精度高く予測することができるため、今後自病院の医療圏の高齢者人口がどの程度変化するかは確実に押さえておきましょう。高齢者人口が増える都市部の病院は病床数を増やすことも選択肢となりますが、地方には若年層だけでなく高齢者も減少傾向となる医療圏も多く、患者数増加が見込めなければ病床数の削減が現実的となります。
平均在院日数の推測
近年、病院の在院日数は短縮傾向が続いており、「平成29年(2017年)医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」によると、一般病床の平均在院日数は、2008年:18.8日、2017年:16.2日と約10年で3.6日短くなっています。これは、年間3,000人の入院患者がいる病院を想定すると、2017年は2008年と比較して21.4床が空床となる計算となり、稼働を維持するためにはより多くの患者数を獲得する必要があります。平均在院日数の短縮は主に診療報酬による誘導で進められてきました。今後も平均在院日数は短縮されていく前提で試算をすることで、必要以上に病床を抱え、無駄な固定費を計上してしまうリスクを減らすことができるでしょう。