各医療サービスを外部委託するか内製化するかは、病院のコストマネジメントに大きな影響を及ぼします。全国的な委託状況を見ると、概ね次のように分類できます。
①ほぼ全ての病院が外部委託(委託率:90%超)
・寝具類洗濯(98.4%)
・検体検査(97.3%)
・医療廃棄物処理(97.1%)
・医療用ガス供給設備保守点検(92.8%)
②半数以上の病院が外部委託(委託率:50~90%)
・院内清掃(87.5%)
・医療機器保守点検(86.5%)
・患者等給食(70.3%)
・在宅酸素供給装置保守点検(54.8%)
・院内情報コンピュータ・システム(52.0%)
③半数以上の病院が内製化(委託率:20%~50%)
・医療事務(35.9%)
・ 滅菌消毒(35.2%)
・院内物品管理(31.4%)
・医業経営コンサルティング(20.7%)
④ほぼ全ての病院が内製化(委託率:20%未満)
・在宅医療サポート(17.9%)
・患者搬送(17.3%)
・医療情報サービス(14.7%)
次に、サービス項目別に2018年度の委託率と1994年からの委託率変化幅の関係を見ると、下図のようになります。
右下に位置するサービス群(寝具、検体検査、院内清掃、医療用ガス保守、医療機器保守、廃棄物処理)は、20年以上前から委託率が80%を超えており、大きな増減もないことから、成熟市場と見ることができます。サプライヤー(サービスの供給企業)が多く存在するため、サプライヤー変更等のコスト削減活動により委託費を削減できる可能性が高い領域とも言えます。逆に、左上に位置するサービス群(院内物品管理、在宅医療サポート、医業経営コンサル等)は、近年外部委託する病院が増えている、つまりニーズが上昇している成長期の市場です。この領域のサプライヤーはまだ少なく、外部委託する場合は、サービスの質が担保できることを前提に費用対効果を慎重に検討する必要があるでしょう。また、1994年以降委託率が50%前後でほとんど変化がない医療事務や在宅酸素保守については、外部環境の影響を受けにくく、病院の方針で外部委託or内製化が決定されることが多いサービスと見ることができます。但し、最近はサプライヤー側の人材不足傾向が顕著になってきており、今後、これらのサービスは内製化し自病院で優秀な人材を育成する方が、長い目で見てコストも低く抑えられると私は考えています。