調達組織に歴史あり
調達組織が今後、どのようにあるべきかを考える際の一つの視点として、調達組織の役割がどのように変遷してきたかという過去を見ることで、未来の姿を探っていきましょう。
目次
黎明期(~1980年代)
単純な役割しかなく、受発注の事務処理のみ行う。根切り交渉も行うが、その裏取りとなるロジックはほぼなく、“値下げのお願い”という感情的な交渉のみ。
発展期(1980~1990年代)
社内の情報管理が進んだおかげで、社内間ベンチマークが可能となり、サプライヤーとの交渉に際して比較データを基にした交渉が可能となる。また、購入品情報の集約組織と社内で認識されたことにより、購入先や価格の決定権も部分的ではあるが付与されるようになる。
拡大期(1990~2000年代)
海外調達が一般的になってきたことにより、調達組織の役割も拡大。物流情報の把握による納期管理も重要になり、仕様情報の機密情報管理や取引契約についても関与し始める。さらに、論理的な交渉に向けた原価管理も行う会社も増加。1992年には、ロバート・S・キャプラン(ハーバード・ビジネス・スクール教授)とデビッド・ノートン(コンサル会社社長)によりBSC(Balanced Score Card)が開発され、コスト面からも業績管理が行うことが一般的になる。
成長期(2000~2010年代)
購買機能をoutsourcingすることも散見されるようになり、調達という機能自体が事業になるようになる。SCM(Supply Chain Management)の1部機能を担ったり、間接費の購買についても調達組織の管轄になる。コンプライアンス対応や購買にも戦略(攻めのコスト削減)が求められるようになる。調達活動にも価値を求められるようになる。
主導権獲得期(2010年代~)
大企業に於いて、調達部門出身者がトップになることも出てくる(トヨタ自動車の渡辺捷昭元社長、東京電力の清水正孝元社長、東芝の田中久雄元社長等)。目に見えない調達オペレーションコスト削減に関しても期待される。また、調達組織のみで行っていた購買戦略が他部署も巻き込んだ全社的な購買戦略の指揮、管理が求められる。コンプライアンス対応はもちろん、内部統制やISO等の順守もより厳しくなり、コンサル会社といった外部との連携により自社だけでは出来ないコスト管理が求められるようになる。
調達組織が社内の出世コースになる時代を創る
このように歴史的に見ても、調達組織の役割は拡大し、より経営に直接インパクトを与えるようになってきています。2020年代までは今後もその方向性は変わらず、“コストを下げることと品質を向上すること”という一見、トレードオフの関係にあることを両立する方法論の実行が求められることもあるでしょう。調達組織を経験していなければ、品質視点でコストを見るため、なかなかそのトレードオフの関係を解決することは出来ません。コスト視点で考えられる調達組織の人間だからこそ、“何がコストドライバー”で“品質を向上しながら変更するのはどのポイントか?”をロジカルに考えながら、解決に導けるはずです。
コスト視点で経営によりインパクトを与えることで「エリートコースは調達組織を一度通ること」が一般的になるくらい、調達組織が主流になる時代を創っていけると考えています。