今回は「実行」フェーズのサプライヤーソーシングについて見ていきます。
目次
サプライヤーソーシングの際、多くの企業にありがちな状況
サプライヤーソーシングにおいて、多くの企業で以下のような状況がよく見受けられます。
- 能動的なサプライヤー市場開拓は行われておらず、サプライヤーの売込みを待っている
- 攻めるべき品目カテゴリーをどう選定して良いか分からない
- 商品開発の際、根拠無く2~3社から相見積もりを取る程度
これらの原因としては
- 調達はマーケティング活動(攻めの活動)だという認識・発想がない
- トップが攻めの調達に人材を投入する決断をしていない
- サプライヤー市場の規模・寡占度・主要プレイヤー等をファクトベースで押さえていない
- 海外も含めた広大な市場から短期間でベストパートナーを絞り込む方法が分からない
などが挙げられます。この中で「海外も含めた広大な市場から短期間でベストパートナーを絞り込む方法が分からない」ことが原因となっている場合、サプライヤーソーシングによって解決が可能となります。
ソーシング方針策定のプロセス
ソーシング方針策定は以下のプロセスで行われます。
ステップ① 市場をセグメント化する
この作業は“何をやるか“ではなく、”何をやらないか”を定義するための作業です。調査しない領域を定義することで、作業期間を短縮することができます。セグメント化の軸としては「地域」「企業規模」「資本構成」などを目的に応じて使い分けます。同様に、物流費、もしくは、リードタイム等の制約事項から地理的範囲を設定します。
オガ粉の例で説明します。オガ粉の場合は、リードタイムによる制約がないため、輸送費(輸送距離)のみを考慮します。
オガ粉の原価構造は、原料費、加工費、輸送費、経費で構成されます。当時、原料となる木材は価格高騰傾向にあり、原料費の削減は厳しい状況でした。また、加工に特別な技術は必要なく、加工度も低いので、原価に占める加工費の割合も低くなっていました。一方、オガ粉はかさ高く、使用できるトラックも限られるので、輸送費が15~20%程度と高くなっていました。この状況から輸送費に注目しました。
各サプライヤーの輸送距離を算出し、標準タリフから見積価格に占める輸送費を算出します。オガ粉原料費の削減は難しいことから、現在の価格を基準に平均程度の価格に納めるためには、適切な輸送距離が200kmとなりました。このことから輸送距離が200km以上のサプライヤーはセグメント外とし、調査対象からは外しました。
ステップ② 調査項目を決定する
ここで重要なのは、どうやって選ぶかを先に決めてから、必要な情報を決めることです。未知の対象に対してはついあれもこれも調べたくなってしまいますが、その心情はぐっとこらえて選定の判断に使われる情報のみを調べ、仕入先候補選定に無用な負荷をかけないようにしましょう。そのためにはどういう基準で仕入先を選定するか、を最初に決めることが必要です。
ステップ③ プロセスを設計する
1社あたりに投入可能な工数や情報の機密性を考慮して、選定プロセスを設計していきます。プロセスは一般的に、市場調査→RFI→RFQ→工場監査→面談・交渉→選定という順番に流れていきます。これを仕入先の立場に立ってみると、プロセスの進行に伴って、「営業」→「商談」→「契約」という具合に進展していくことになります。その進展に合わせて開示要求する情報の機密レベルや回答に必要な手間などを適切に調整していく必要があります。買い手の立場としては、プロセスの進行に伴って1社あたりに投入できる工数が増えるので調査内容をマクロからミクロへと適切に変化させていくことが必要です。
ステップ④ ツールを作成する
ツールを作成し、時間短縮とファクトベースの徹底を図ります。ツールを導入すると
- 集計作業等の自動化による大幅な時間短縮(逆に言えば調査対象の拡張)
- ミスコニュニケーションの抑制
- 作業者による品質のばらつき低減
- 仕入先間比較の公平性の確保
- 客観的事実に基づいた判断の促進
などのメリットがあります。
ツールを作成するときは
- 仕入先の負担が最小になるように工夫すること
- 選択式回答を活用し分析を容易にすること
- 事実を確認することにこだわること
などに留意しましょう。
ステップ⑤ ソーシングを実行する
ソーシング実行の際は、公平性・透明性を強く意識し、仕入先候補に丁寧なフィードバックを心がけましょう。また、可能な範囲でファクト開示をしましょう。