今回から、事務部門の業務改善について実際の成功事例を紹介していきます。多くの病院の事務業務を詳しく分析し比較すると、目的や内容は同じであっても、「やり方」が病院によって違う業務はたくさんあります。少しの工夫で業務が効率的になることも多いので、是非自病院にも取り入れてみてください。今回は、受付業務について取り上げます。
病院の正面玄関を入ってすぐの受付窓口は、多くの外来患者や業者が利用する「病院の顔」です。ほとんどの病院では「総合案内」や「初診受付」、「会計」など、役割ごとにカウンターが設置され、病院スタッフや委託スタッフが患者対応を行います。A病院(民間病院、200床台)では、特に患者の多い午前中の受付業務に課題がありました。患者は病院に入るととにかく空いている窓口に向かうため、会計担当や入院対応のスタッフも、目の前に来た患者の目的に応じて総合案内や初診対応を行っていました。そのため、患者が来る度に自身の業務を一度中断せざるを得ず、時間が余計にかかったり本来対応すべき患者を待たせてしまったりと業務が非効率になっていました(下図:イメージ)。
A病院は改善策を検討し、3つの対策を行いました。一つ目は、総合案内を病院入口付近に移動させることで、単純な道案内の患者や業者が奥の各受付に流れることを防ぐようにしました。二つ目は、総合案内付近にボランティアスタッフを午前中配置し、「初診の方はこちらです」「紹介状をお持ちの方はあちらです」などと口頭で案内することで、外来患者のトリアージ機能を持たせました。三つ目は、各受付窓口にベルトポールパーテーションを設置することで、目的別に患者が並べるようにしました(下図:イメージ)。
外来患者の導線を整理したことで、各受付スタッフが自身の業務に集中できるようになり、生産性が向上しました。A病院ではこれまで14時過ぎまで各窓口に一人のスタッフが張り付いていましたが、この対策によってそれが13時半ごろまでに短縮されてきています。更に、患者も目的の場所に迷わず向かうことができ、患者満足度向上の効果も期待されます。
実はこの取り組みは、高級ホテルのロビーサービスから発想を得ています。自分が利用客だと仮定して、スタッフや受付がどのように配置されていると自分がストレスなくホテルを利用でき、かつスタッフも各々の担当業務に集中できるかを考えると、病院にも応用できるアイデアが今回のほかにもたくさん出てくるでしょう。