2019.07.25

病院建築費の現状

病院は30~40年周期で建て替えが必要になります。実は、戦後に病院の着工件数がピークになったのが今から40年前の1980年前後になります。当時は病床を増やせば増やすほど事業が拡大できたこと、そして1985年の第一次医療法改正にて、二次医療圏ごとに病床数が規制されることになり、今後増床が難しくなると考えた医療機関が多かったことが背景にあると考えられます。現在は、その時期に作られた多くの病院が建て替えの必要性に迫られています。病院の建て替えは経営上最大の投資案件となるため、将来を見越した設計や資金調達、返済計画の準備が求められます。

 

 

建築費単価は20年で約1.3倍に

病院・診療所建築費の平均単価は、2000年の「23.4万円/㎡」から2018年では「31.2万円/㎡」と約1.3倍上昇しています(下図)。特に2013年以降の急激な上昇は、東日本大震災の復興事業に伴う需要増加も影響していると考えられます。仮に300床の病院を2018年に建て替える場合、20年前と比べて約14億円も多く建築費がかかることになり、近年の病院の経営環境悪化の一因になっていることは間違いありません(1床=60㎡で試算)。なお、金額は「工事費予定額」で算出しており、着工から建物完成までに要した実際の工事費ではないため、過少評価となっています。

建築費単価は地域差も大きい

建築費単価は地域差も大きく、都道府県によって3倍以上の差があります(下図)。単価が最も高い東京都は、東京オリンピック・パラリンピックに向けた公共工事の需要増も影響していると考えられます。医療サービスの価格は基本的に全国同じであるため、建築費単価が高い地域で病院を運営する方が、経営への影響が大きくなります。建築費を適正額に抑制するためには、インフラ需要や金利の変動を考慮した建て替えのタイミングとエリアを十分に検討することはもちろん、次の建て替えまでの30~40年を見越した事業計画と設計が非常に重要になります。次回は、建築費にも大きな影響を与える将来の適正病床数の考え方について紹介します。

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