厚生労働省の調査によると、過労死基準である月80時間以上の時間外勤務(勤務時間が週60時間以上)をしている病院勤務医は全体の40.5%を占めており、まさに医師の働き方改革が求められています(下図)。
一方、平成29年度厚生労働行政推進調査事業で実施された医師のタイムスタディ調査によると、当直なしの場合の病院勤務医の業務内容内訳は、診療(入院、一般外来、救急外来)が75.3%、診療外(自己研修、教育、研究など)が14.5%となっています。中心業務である診療は診察、回診、手術といった医師の専門業務だけでなく、診療記録・各種書類の作成、指示書記入・オーダー入力といった事務作業も含まれます。そのような事務作業は全体の15.7%、診療の20.8%を占めます(下図)。
週60時間勤務している医師の場合、週9.4時間、年換算すると実に490時間を事務作業に費やしていることになります。勤務医の時給を5,500円とすると、医師一人あたり年間約270万円のコストが事務作業にかかっている計算です。20名の医師が勤務している病院であれば、年間約5,400万円と非常に大きな額になります。
診療記録・各種書類の作成、指示書記入・オーダー入力といった事務作業は、医師しかできない業務では決してありません。効率化したり、体制を整えて他職種に移譲(タスク・シフティング)したりすることで、医師の業務負担軽減だけでなく、コスト削減にも繋がります。例えば上記病院において、医師の事務作業の50%を時給1,500円の医師事務作業補助者に移譲することができれば、年間約2,000円のコスト削減が可能になるのです。医師の働き方改革においても、病院経営においても、業務の役割分担とタスクシフティングは重要性を増していくでしょう。(参照:病院におけるタスクシフティングの考え方、病院でタスクシフティングを成功させるためのポイント)