2018年度診療報酬の改定率は、本体が+0.55%、薬価・材料が▲1.74%でした。改定から早くも約1年が経過するなか、病院経営はどのような影響を受けたのでしょうか。
医業利益ベースで病院の6割が赤字
医業利益ベースでは、2018年度改定後も約6割の病院が赤字となっており、大きな変化はありません(下図)。自治体病院では他会計負担金が医業収益に計上されてる場合があるため、自力で医業利益を達成できている病院はもっと少ないでしょう。また、全体の52.9%が昨年と比較して減益となっています(図非表示)。
コスト増が収益増を上回り収支が悪化。給与費や委託費が影響
損益計算書の変化を見ると、医業収益が100床あたり1,722千円増加している一方、医業費用がそれ以上(100床あたり2,844千円)増加しており、医業損失が100床あたり1,152千円増加となっています。医業費用のなかでも、特に給与費・医薬品費・委託費の伸びが目立ちます(下図)。
在院日数短縮や診療報酬本体部分のプラス改定、集患等によって診療単価が向上し、医業収益は増加するものの、増える高齢患者や認知症患者に対応するために人手が多く必要になっていることが背景にあると考えられます。また、人材不足による派遣単価の上昇も委託費増加に影響しているでしょう。
今年10月に消費税が8%から10%に上がることで、病院経営はより一層厳しくなることが予想されます。給与費や委託費が経営を圧迫しているからといって、安易に人員整理をしたり給与水準を引き下げたりすることは、人材の流出に繋がり更なる経営悪化を招きかねません。限られた経営資源を最大限有効活用するために、生産性の向上(業務のムダを省き、より収益に直結するアクションを増やす)だけでなく、中長期的には事業規模の見直し、つまり適正な病床機能と病床数を検討することも必要になるでしょう。
(出典:平成30年度病院経営定期調査)