2020.08.13

当直体制の改善で救急車応需率向上とコスト削減を実現する

二次救急医療を担う急性期病院において、救急車を断らずに受け入れるということは社会的責任だけでなく経営面でも非常に重要なミッションになっていますが、実際は様々な要因で「救急車のお断り」が発生しています。

救急車応需率の平均値は85.1%

日本病院会QIプロジェクトによる調査によると、2018年の救急車・ホットライン応需率の平均値は85.1%、中央値は88.5%です。二次救急指定病院であれば、応需率90%以上を目指すべきでしょう。逆に、応需率が90%未満の病院は、改善の余地があると言えます。

当直体制のミスマッチ改善が応需率向上の鍵

救急車を断る理由としては、「ベッド満床」、「専門医不在」、「担当医が他の救急患者対応中、もしくは手術中」、といった回答が多く聞かれます。しかしながら、これらの理由は表面的なものであり、救急車のお断りが生じる本当の原因を深掘りしていくと、当直体制に課題があることが多くあります。

昨今は働き方改革の影響もあり、当直体制の維持に苦慮している病院も増えています。貴院では次のような課題はないでしょうか。

  • 当直できる常勤医師を増やしたいが、応募者は当直を敬遠することが多く、医師の採用が思うように進まない。
  • 常勤医師でカバーできない部分は非常勤医師に当直してもらっているが、高いバイト代を払っているにも関わらず勝手に救急車を断る。当院から頼んで来てもらっているため、強く指導できない。
  • 当直医の専門分野の問題で複数名の非常勤医師を配置する必要があり、過剰なコストが発生している。

当直のために毎日非常勤医師を1名配置するには、一般的に月に150万~200万円の費用が必要です。一方、救急車搬送された患者が入院対応になると、その患者が退院するまでに病院には70万~150万円/件の収益貢献が見込めます。応需率が低い病院は、高いコストをかけて当直体制を整えているにも関わらず、月に数百万円~数千万円の機会損失が生じていることになります。

この「当直体制のミスマッチ」を改善することで、救急車受け入れ件数を増やし、同時に当直体制にかかるコストを削減することも可能になります。

 

自院の医療機能・院内体制に合った医師を確保する

「救急車を断らない医師」の確保は、非常に難しいことでもあります。まずは、自院に搬送される患者の病態や重症度、必要な処置を分析し、自院の当直医に必要な専門分野やスキル(ニーズ)を正確に把握しましょう。なお、「日勤業務は常勤医師、当直業務は非常勤医師」という完全分業体制にした方が、常勤医師の確保が容易になり、病院全体の医師採用コストの削減に繋がることもあります。当直部分だけでなく、病院全体の診療体制を最適化することも併せて検討することが重要です。

医師の採用には民間の紹介業者を利用することも多いですが、自院のニーズに合う医師を採用できないと、応需率は上がりません。最近は救急車を受入れることを前提とし、医師の質を担保するシステムを導入した医師紹介サービスもあるので、活用すると良いでしょう。

救急隊との情報共有を強化する

地域の救急隊と密にコミュニケーションを取り、連携を強化することも重要です。自院の当直スケジュールや受入れが難しい疾患を事前に救急隊と共有したり、定期的に病院と消防署で意見交換会を開催したりすることも有効です。

新型コロナウイルスの影響で稼働率が低下傾向にあるいま、救急は経営改善の大きな可能性を持つ部門です。救急車応需率に課題がある場合は、この機会に当直体制の改善に取り組んでいきましょう。

 

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