2021.03.16

メッキにおける環境負荷低減プロセス ~六価クロム代替技術について~

今回は、メッキのプロセスの前処理工程における環境負荷低減プロセスを紹介します。

メッキのプロセス

これまでに何度か取り上げているメッキですが、実際にメッキをする前後では様々な作業が必要となります。

図1:プラスチックへの無電解ニッケルメッキ 工程の流れ

メッキ不良の半分以上は前処理に原因があると言われるほど、表面処理において前処理は非常に重要な工程です。前処理では、素地とメッキする金属との金属結合に影響を与える物質を除去する必要があり、影響を与える要因は下記の通りです。

・素地表面の油脂や酸化物
・素材中に存在する酸化物や硫化物、鉛やケイ素等の不活性物質
・再度表面に形成された化合物被膜

上述は絶縁物や、共有結合やイオン結合等の金属結合と違った結合をもつ物質です。高い密着性を得るには、メッキする金属と素地との界面に多くの金属結合ができるような表面を形成することが重要です。プラスチックの場合は、金属結合が得られないために物理的な結合力が必要で、多くのアンカー効果を得られるかどうかがポイントになります。

 

図2:メッキ密着について

プラスチックとして最もメッキ素材としての汎用性が高く、プラスチックメッキ市場の大半を占めるのはABS樹脂です。ABS樹脂への密着機構は、エッチング工程でABS樹脂のブタジエン成分が選択的に溶解され、その穴の中にメッキが均一に析出してアンカーが形成されます。このエッチングプロセスでは、現状ほとんどの場合でクロム酸系エッチング液が使用されています。

六価クロムの規制

メッキ技術が利用されている電気・電子および自動車業界では、有害物質を含有した製品の上市を制限しています。

RoHS
Restriction of certain Hazardous Substances in electrical and electric equipment の頭文字をとってRoHSと呼ばれる規制が2006年7月よりEUで施行されました。
電気・電子部品に含まれる有害物質の使用を制限するもので、メッキのエッチング処理に使用される六価クロムや鉛が対象になっています。

ELV
End of Life Vehicles(廃自動車令)のことで、略してELVと呼ばれ、2000年10月よりEUで施行されました。使用済み自動車が環境に与える負荷を軽減するための指令で、自動車から廃棄物が出ることを防止、または削減するために使用済み自動車やその構成部品の再利用や再生利用すること、そして処理業者が効率よく処理できるようにすることを目的としたものです。
この指令でもメッキのエッチング処理に使用される六価クロムや鉛が対象になります。

そこで環境対策として、様々な工程で使用されている六価クロムを使ったプロセスを代替する技術が開発されています。

六価クロム代替技術

メッキ工程において六価クロムは、プラスチックのエッチング液以外にも工業用クロムメッキ、装飾用クロムメッキ、黒色クロムメッキ、亜鉛メッキや無電解メッキ、アルミニウムのクロメート処理など多くの工程に使用されています。この六価クロム対策としては下記の通り進んでいる分野もあります。

装飾用クロムメッキ
自動車、家電製品を中心に、安全な三価クロムの化成処理が用いられるようになってきました。しかし、従来の六価クロムでのメッキに比べて、今だ耐蝕性がよくない等の欠点があります。

亜鉛メッキのクロメート処理
三価クロムによる化成処理への代替が進み、従来法に比べて化成皮膜は耐蝕性、耐熱性に優れています。

上記以外に代替技術が望まれる分野の一つがプラスチック向けのエッチング液です。
現在は高濃度の無水クロム酸と硫酸を含む混合水溶液が使用されていますが、廃液・排水が環境汚染を引き起こす可能性があること、それを防止するために排水処理に大きなコストがかかる等の問題があります。

代替技術を最終の量産現場で使用するには、現行プロセスと同程度のエッチング性能を持ち、液が安定であること、治具へメッキが析出しないことが求められます。
6価クロムと同程度の酸化還元電位をもつ過マンガン酸は長らく代替候補として検討されていますが、未だ液の長期安定性やエッチング性能に課題があります。
環境負荷の少ない有機溶媒を使った新たな技術開発も進んでおり、早期のクロム酸エッチング代替プロセスの実現が期待されます。

産業界において微細化、精密化、高機能化を実現するためにメッキは必要な不可欠な技術であり、併せて環境負荷低減技術も発展することが注目されています。

レステック株式会社ホームページはこちら ⇒ https://www.lesstech.jp/

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