2020.10.23

研磨業界におけるコストダウン

 

今回は、産業分野の加工方法の一つである「研磨」について、用途事例と最新の研磨技術をご紹介します。

目次

研磨とは

「研磨」とは物の表面を滑らかにすることを意味し、産業分野では砥石を高速回転させる、あるいは砥粒(とりゅう)と呼ばれる硬度が硬く微細な粒を製品表面に接触させることで表面の異物や凸凹を除去し、なめらかにする加工工程のことを指します。マイクロメートル単位での精度が求められる製品や外観・美観が求められる製品に多く用いられ、身近な例では包丁を研ぐことも「研磨」にあたります。

今回は産業分野で利用されている研磨事例についてご紹介します。

 

①用途例

自動車

車体の内側は素地と呼ばれる鉄板からできていて、外側に向かって電着塗装層、プライマー層、顔料層、クリア塗装で覆われています。キズで痛んでしまった車体をキレイに研磨する工程では、最外層のクリア塗装40ミクロン層を10ミクロン程度磨き、キズのエッジ部分を除去、塗装面全体が滑らかになるよう鏡面状態に仕上げられています。

引用元:KeePer技研株式会社

 

半導体

テレビ、冷蔵庫、洗濯機等の家電製品やインターネット、通信といった社会インフラに至るまで様々な分野の機器制御に重要な役割を担っている半導体ですが、この半導体の基板材料となるシリコンウェーハにおいて、1ミクロン単位での高精度な研磨技術が用いられています。

引用元:ニッタ・デュポン株式会社

 

➁研磨方法

加工対象の形状・性質や最終的に求められる要求事項によって研磨方法が選択されます。

砥石研磨

回転する砥石に加工対象を接触させる方法で、包丁を研ぐこともこれにあたります。

ラッピング研磨

数ミクロンの砥粒を含む液体研磨剤を使い、円盤状の平坦なラップ盤で加工対象に圧力を加えて擦り合わせながら研磨する方法で、半導体の基材料の研磨に使用されます。

 バフ研磨

布や麻のようなやわらかい素材と研磨剤を回転させながら加工対象に接触させる方法で、鉄道部品の鏡面仕上げに使用されます。

電解研磨

電解研磨液に加工対象を浸漬し、電流を流すことで表面を溶かして平滑化する方法。電気分解によって凸部が優先的に溶解する効果を利用します。高精度の平面が出せる上、他の研磨法では狭すぎて研磨しづらい部分も研磨することができます。この電解研磨によるコストダウン事例、最新技術については次章以降でご紹介します。

 

コストダウン事例

(以下、スエナミ工業株式会社ホームページから引用 https://www.suenami-ind.com/point/)

研磨工程ではいかに工数を減らせるかがコストダウンのポイントです。食品機械や医療・医療機器用で使用されるステンレス板金加工へのバフ研磨でのコストダウン事例をご紹介します。

①研磨箇所を絞る

図面に研磨箇所指定なしでバフ研磨と書かれている場合、請負側ではどこの部位が研磨が必要であるかが判断しかねるため、全面にバフ研磨を施してしまうケースがほとんどです。研磨作業を最小限に抑えるため、部品組付け後に外から見えない箇所は研磨を行わないよう設計を変更することで工数を削減し、コストダウンを図ります。

➁バフ研磨から電解研磨へ変更

バフ研磨は仕上げ面が非常にきれいですが、手作業で最も工数がかかる方法の一つです。仕様上問題なければ光沢は若干劣りますが、電解研磨によって工数を抑えてコストダウンを図ることができます。

 

最新研磨技術の金属3Dプリンターへの応用

自動車・航空・医療などの幅広い分野で試作のコスト・時間を削減する3Dプリンターの活用が期待されています。短時間で自由度の高い形状をもつ造形品をつくることができ、最近では試作品だけでなく、実際に航空機に搭載される部品を金属3Dプリンターで作る事例もあります。ただし、金属3Dプリンターで作られる造形品は金属粉末材料を溶融・焼結させるため、表面の凹凸が大きい・粗いという課題もあります。

最新研磨技術である特殊膜で作った複合電極を使用した電解研磨によって、部品内部と外部表面の同時研磨が可能となりました。さらに、特殊膜で覆われている電極のため、従来の電解研磨では漏電リスクがあった狭小なエリアの処理も可能となりました。複雑な形状への対応や長い加工時間や熟練したスキルが必要であった表面仕上げ加工へのコストダウン手法として期待されています。

航空手・宇宙分野のエンジン部品は複雑な形状が多く、唯一無二のオリジナル部品が必要となることもあります。今後も3Dプリンターの普及が進むにつれて表面研磨技術の必要性も高まっていくことが予想されます。

 

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