コンサルティング報酬を払ってくれるのはクライアントであることは間違いないのですが、“お客様は神様”とまで思わなくてもいいでしょう。クライアントも自社でできないからこそ、コンサルティング会社に頼んでいるのですから、お互いが平等の関係であるはずなのです。とはいえ、心情としてクライアントのことを同じ目線で見ることは容易ではないことも理解できます。中でも、手のかかるクライアントに遭遇した際には“見えない”力関係により、非常に時間や心労が掛かることもあります。いざという時のために、「自分が遭遇したクライアントは、他のコンサルタントも経験するのだな」ということを知っているだけでも心が楽になり、前向きにそのクライアントの期待値をマネジメントする方向に動き出せるものです。それでは手のかかるクライアントの代表例を見ていきましょう。
①とにかく工数を掛けさせることが目的族
「高級文房具」「高級派遣」というコンサルタントを揶揄する言葉を聞いたことがあるかもしれません。コンサルタントを協力者としてではなく、手下のような存在としか思っておらず、とにかく指示、命令をしてくる方がいらっしゃいます。そして、評価は成果物ではなく、“どれだけの時間を費やしてくれたか”という基準で見てきます。残念ながら、それなりの人数がいらっしゃるのも事実です。対応策としては、成果物に掛かる工数を資料として定期的に報告すると良いでしょう。その際は、一般的な(超優秀では無い)コンサルタントが費やした時間を報告すると良いでしょう。
②過剰要求族
プロジェクト開始前にスコープを確定することが必須であるのは当たり前過ぎて言うまでもありませんが、クライアントの中にはスコープ外の要求をしてくる方もいらっしゃいます。程度の差、態度の差はあり、「申し訳ないのですが、スコープ外とは分かりつつこの作業を今回だけお願いできますか?」というような態度でお願いされた場合は、相手もスコープを意識できる方なので、毎回という訳にはいきませんが引き受けることで信頼を積み重ねることができるでしょう。
ただ、会うたびにスコープ外の要求をしてくる方がいたら要注意。その方の意識には“お金を払っている方が偉い”ということがあります。その方に対しては、初めのころは関係構築のために少し聞いても良いですが、本来のスコープに影響を及ぼしそうな事案を依頼された場合は断固として「そちらはスコープ外なので、必要時には追加報酬で○○のように対応させていただきます」と伝えましょう。そうしないと負のループに入ることになります。
③当事者意識皆無族
プロジェクトが始まると、コンサルタントとしては「より良い成果をクライアントにもたらしたい!」と意気揚々に先方とのコミュニケーションを開始するのが普通かと思います。一方、クライアントの担当者や事務局の中には、当該年度の人事評価にそのプロジェクトの結果が入っていなかったりすると、ヤル気を出さない方がいます。典型的な具体例としては、①その方のメールにCCでの宛先が大量発生する、②コンサルタント側が関係者をCCに入れてメールをしたにも関わらず返信の際、抜いてくる、といったことが分かりやすい例で挙げられます。
上の記事でもお伝えしたように、コミュニケーションコストがプロジェクトに関わらず、仕事をする上では非常に大きなコストになります。それは時間と言う資産を費やすからです。当事者意識の無い方には、どれだけ濃い内容の事を非常に丁寧に伝えたとしても響きません。行動もしてくれませんし、してくれたとしても遅かったり、もらえるアウトプットが不十分だったりします。そうすると結果として、プロジェクト全体の成果が出なかったり、時間が掛かったりして両社にとってアンハッピーなことになります。
早めの段階でこのような方が特定できた場合は、早急にクライアント側のプロジェクトオーナーに依頼し、担当者変更を頼むことが最終的には両社のハッピーに繋がります。
④都合の悪いことは忘れる族
どんな業界にいても、どんな規模の会社にいても、状況は刻一刻と変わります。状況が変わると最適な対応も変わるものです。そのように対応を柔軟に合意の下に変えてきたにも関わらず、唐突に「3カ月前は●●と言っていたのに、それが進んでいない」と文句を言ってきたり、コンサルタント側から「1カ月前に■■とお伝えいただいたので、このような対応をしました。」というと「それはそのときの状況で今は違うのですよ」と言ったことすら覚えておらず、責任を転嫁してくる方がいます。
なぜ責任を転嫁してくるかというと、その方がクライアント社内の担当者であり、遅延理由を社内で説明しなくてはならない局面にあったりするとこのような態度に出ることがあります。
事実を事実としてクライアント側のTOPにいつでも伝えられるようにするためにも、議事録や会議録音等を撮ったりしてください。
身も蓋もないかもしれませんが、一年に一回くらいはこのようなクライアントに遭遇すると思っておくべきです。その時は、「おっ、今年のアタリだ」ぐらいに思い、粛々とプロジェクトの成功のため尽力することをチームメンバーと再確認してください。どんな研修よりもチームビルディングにはなります。