倉庫管理システム(WMS)という言葉を聞くと、導入することで「在庫管理を効率化し、簡単にできるようにする、正確なものにすることができる」ということは、簡単に想像がつきますが、その他はピンとこないと思います。
WMSには導入することにより得られるメリットが多くあります。すでに導入されていても、自社の方針に合ったWMSを考え選び直すことで、より効率的な在庫管理が可能となります。
本稿では、WMSを導入することによるメリット、自社に合ったサービスの選び方をまとめました。加えて、WMSを提供している幾つかのサービスをご紹介いたします。
目次
在庫管理の実態
在庫管理とは、在庫数や入庫数・出庫数の把握をするだけだと軽視していませんか?
在庫管理を徹底せずにいると多大な損害を被る可能性があります。例えば、出庫するはずの物がない・届け先を間違えてしまうというようなミスが発生してしまうと、顧客からの信頼を落としかねません。
また、入庫数を誤って記載してしまうと、自社の損害につながります。このように、在庫管理は自社の不利益だけでなく、顧客の信頼の失墜にもつながる重要なものですが、在庫管理の実態はどうなっているのでしょうか。現状を詳しく見ていきたいと思います。
現状
私たちの生活は、インターネットを通じた買い物や宅配業の規模の拡大によって過ごしやすいものとなりました。一歩も外に出ることなく買い物ができたり、毎週決められた曜日に食品を自宅まで届けてくれるサービスもあります。
ただ、これに伴い流通する物の量が増えるため、在庫や届け先など管理しなければならない情報量は確実に増加しています。管理しなければならない情報量が増えている反面、IT(情報技術)の発達によってWMS等のシステムを導入できるようになったことから、情報管理は簡易化し、質は高まっています。
しかしながら、在庫管理の現状は、WMSを駆使せずに手作業による管理や、エクセルを活用している企業が少なくありません。では、どうして在庫管理においてWMSの導入が進んでいないのでしょうか。それは、次のような理由によります。
課題
- 倉庫の規模が小さいため、大規模な倉庫を保有している会社と同じシステムを導入してもコストが増加するだけと考えている点。
- エクセルは無料で在庫管理ができるため、わざわざコストをかけてまで導入する必要はないと考えている点。
- WMSのようなシステムを活用し、管理を効率化したいと考えていても、このようなシステムが提供されているということを知らないため、導入しないという点。
主に、上記の3点が挙げられます。全てに共通していることは、WMSのことについてよく知らないということです。
そのため、特徴やメリットといったWMSそのものを知ってもらうことが課題であると言えます。簡単なように思えますが、たったこれだけのことで導入を考えてしまうほどのメリットがWMSにはあります。次に、WMSのメリットや事例などを見ていきます。
WMSとは
WMSとは「Warehouse Management System(倉庫管理システム)」の略です。入出庫管理や在庫管理、ロケーション管理などの機能を搭載しており、倉庫業務全般の効率化のためのシステムです。倉庫業務は、大きく分けると「入荷業務」、「出荷業務」の2つのプロセスで構成されており、一般的な業務フローは下記の通りです。
一見するとシンプルとも思える工程ですが、どの工程を見ても、人的ミスの発生源となる「モノの数字を扱う処理」が必要不可欠となります。まさにその点が、WMS導入の一番のメリットとも言えます。多くの機能を有するWMSは、人的ミスの抑止のほかにも、様々なメリットがあります。その中でも一般的なものを具体的にみていきましょう。
メリット
- 作業時間の削減
伝票や指示書の記入、検品、現物確認による照合、棚卸など、入庫や出庫等で手作業で行っていた作業がシステムの介入により不要となる為、作業時間(コスト)の削減が可能となります。 - 誤出荷・誤入荷の防止
作業内容を画面表示することができ、万が一誤ってしまった場合のアラート機能もあります。バーコードリーダを読み取って検品を進めるので、数量の過不足など人的作業によるミスもなくすことが可能となり、物流品質の向上につながります。 - 作業の簡略化
作業が見える化されることで、いつ・どこに・なんの作業にヒトが何人稼働しなくてはならないかが明確になるため、現実的な人件費の調整を行い、また、新しい人が入ってきてもスムーズに業務に入ることができます。 - 倉庫内のロケーション表示
伝票や指示書倉庫の規模が大きい場合などは、従業員が商品を探したり、場所に迷うことを回避することができます。 - リアルタイムな情報把握
ハンディターミナルで情報を記録することで、リアルタイムにデータを作成し、適宜情報を表示することができます。データを他部門に連携することも可能です。
WMSの導入により、人的ミスの抑止や業務効率化のほかに、倉庫業務の「見える化」を実現することが可能となります。「見える化」というと、問題が発生した際に気づきやすい環境にしておくことをイメージされるかと思いますが、そのほかにも「見える化」の過程において、表出していなかった自社の課題を明らかにし、課題解決の糸口を見つけることが可能となります。
自社の倉庫業務の潜在的な課題を認識しているのにどのように解決したらいいかわからない場合は、是非一度、WMSの導入を検討されてみてはいかがでしょうか。後述するWMSの効果も参考になさってください。
事例
実際にWMSを導入した場合の効果について、クラウド型のWMSを導入した2社の事例をご紹介いたします。
A社の場合
- 必要な人数:1日当たり7名の削減
- 1日あたりの作業コスト:84,000円の削減
- 月間作業コスト:1,815,000円の削減
B社の場合
- 入庫品数:月間14万点アップ
- 出庫品数:月間9万点アップ
- 在庫差異:40万点中9万点が、55万点で在庫差異ゼロに
おすすめWMSサービス5選
最後に、これまでの内容を踏まえて、おすすめするWMSサービス5つと、サービスを選ぶ際のポイントとなるWMSの機能についてご紹介いたします。
選ぶ際のポイント
WMSの導入にあたっては、WMSの機能を正しく理解した上で、自社の業務の特徴や倉庫の規模と照らし合わせ、これらの機能が必要かどうか、どの機能について充実していた方がよいかといった点で、各サービスを比較・検討することが重要です。WMSに付随する機能は多岐にわたりますが、その中でも主要な機能について簡単にご紹介いたします。
- 入荷/入庫管理
入荷予定登録・管理、入荷予定リスト作成・データ取込、返品入荷管理、荷口票作成、ハンディ連携 など - 在庫管理
在庫照会、空ロケーション管理、在庫一覧、在庫調整、廃棄処置、出荷留め・在庫振替・名義変更などの登録、製造番号による管理、棚卸し表の作成 など - 出荷/出庫管理
指示データ取込・登録、ピッキングリスト作成、在庫引当一覧や出荷一覧の作成、ハンディ検品、梱包、配車表・納品書・荷札・送り状出力 など - 棚卸管理
棚卸し指示書の作成、棚卸し実績の登録、棚卸し報告 など - 請求管理
運送データの抽出、運賃データ取り込み、入出荷運賃の報告書作成、荷役料/作業料の登録、作業量一覧表の作成 など - 有効期限管理
消費期限登録・管理 など
サービス一覧
各サービスの機能や特徴をまとめた表はこちらとなります。
シーネット
- 運用サポートが充実
24時間365日体制で専任スタッフによるサポート体制(※オプションサービス)が用意されているため、急なトラブル対応にも備えることができます。 - あらゆる業種・規模に対応
BtoB出荷・BtoC出荷の両方に標準対応しているほか、カスタマイズにも柔軟に対応しています。出荷データが月1000件から1日100万件規模のユーザや、単独拠点から42拠点のユーザなど幅広い規模への導入実績があります。 - 各種システム・マテハンとの連携
販売管理や受発注システム等の上位・下位システムや、DAS・GAS・DPSといったマテハン等、あらゆる物流システムとの連携が可能です。
物流センター管理システム(ONEsLOGI WMS)
- 物流ソリューションや周辺機器との連携
輸配送から輸出業務までカバーする各種IT製品との連携のほか、分析/最適化ツールや周辺機器との連携が可能で、拡張性の高さが強みです。 - 現場目線でのシステム開発
長年日立物流をITで支えてきた知識と経験を生かし、現場視線でのシステム開発により「充実した可視化対応」「BtoB、BtoC業務混在に対応」「複数倉庫/複数荷主へ対応」も可能です。 - 基本機能の充実
倉庫や物流センターの入出荷管理、検品、在庫管理、棚卸業務、物流コスト管理といった、一連の物流業務を行うための、さまざまな機能を体系化し、基本機能として標準装備しています。
COOOLA
- 操作しやすい
画面のデザインの見やすさ、わかりやすさにこだわりがあり、直観的に操作できるため、導入したその日からスムーズに作業ができることが特徴です。 - 人員配置の最適化
ハンディでの作業時間を正確に取得し、作業者ごとの生産性を算出することができるため、人員配置や目標設定、給与査定などに活用できます。 - 一体型帳票
納品書、ピッキングリストなどの帳票類を1枚にまとめて印刷し、帳票を一体化することで、仕分けの手間を省き、封入のミスの削減と業務効率化につながります。
ロジクラ
- スマートフォンで読み取り
「紙」を使って行っていたピッキング・検品等の出荷作業を、スマホ型ハンディターミナル(※iPhoneのみ対応)で代替できるため、作業時間を大幅に削減することができます。 - 通販カートシステムとの連携
複数のカートシステムでの入金チェックから出荷指示までの工程を、データ連携により削減することができます。現在は、STORES.jpとカラーミーショップのカートシステムにも対応しています。 - 配達番号と出荷実績の紐づけ
ヤマトや佐川の宅配伝票をスマホのカメラで読み取るだけで出荷データをクラウド上で自動で紐づけ、お客様からのお問い合わせにも対応可能です。
クラウドWMS
- 導入しやすい
最短1日、初期費用35,000円でスタートできるほか、21日間の無料トライアル期間が用意されているため、小規模ネットショップや中小荷主でも簡単に導入できる点が特徴です。 - 無線LAN不要
Android端末にSIMカード(データ通信カード)を入れて利用すれば、現場の無線環境がなくても利用することができます。 - クラウドから宅配伝票を印刷できる
クラウドWMSから宅配伝票を直接Web印刷できるため、宅配伝票印刷システムを利用しなくても、誰でも特別な知識なしに伝票印刷、電文送信が行えます。現状は、佐川急便だけですが、ヤマト運輸、日本郵便、EMSも開発中です。