今回は分析フェーズの『コスト構造分析』について解説していきます。
目次
コスト構造・仕様分析
コスト構造分析では、主なコストドライバーを特定していきます。コストドライバーはコスト削減戦略策定の鍵となる情報です。コストドライバーについては、「【コスト削減戦略の着眼点】コストドライバー」の記事を参照ください。コスト構成要素とは、その品目の単価を”費目”で分解し導き出されます。分解の仕方には機能軸分解と固定・変動軸分解の2通りあります。
固定・変動軸分解
固定・変動軸分解は、固定費と変動費の2つのコスト構成要素を考える分解方法になります。
固定費は売上高(生産量)の変化に応じて変化しない費用、変動費とは売上高(生産量)の変化に応じて変化する費用のことを指します。「なぜ発注量を増やすと単価が下がる?」の記事で詳しく説明しておりますので、ご参照ください。
コスト削減施策は主に集約化によってなされるので、固定費の割合が高いものに対して効果的です。この分析を行うことで、削減効果の出やすい費目を発見しやすくなります。時間的・労力的リソースの観点からコスト削減を実行できる費目には限りがあるので、効率的にコスト削減活動を行うためにはより効果の期待できる費目から取り組むことが重要です。
機能軸分解
機能軸分解は、原材料費、加工費、輸送費など、用途別にコスト構成要素を考える分解方法です。機能軸で分解したコスト構成要素はそれぞれ特徴があり、コストドライバーや有効な調達戦略の方向性が異なります。そのためまずは機能軸分解によってどの要素が重要かを知る必要があります。
機能軸分解におけるコスト構成要素はそれぞれ以下のような特徴を持っています。
研究開発費
基本的には本社の研究開発部門の人件費なので固定費の要素が大きいです。一般的には発注量がコストドライバーです。
原材料費
原材料費は変動費の要素が大きいですが、品目により固定費の要素が少なくないものもあります。発注量・材質・歩留りがコストドライバーである場合が多いです。特に歩留りは複数社でベンチマークなどを行って目標設定する手法が用いられる場合が多いです。
加工費
加工費は大きく人件費と設備の運転費用(減価償却費、電気代など)に分解できます。人件費は変動費の要素が大きいので、生産性・稼働率に着目するのが一般的です。また、設備の運転費用は固定費の要素が大きいので、発注量に着目して圧縮するのが一般的です。
輸送費
輸送費は変動費の要素が大きいです。海外生産品等の場合は、船便か航空便かで決定的にコストが異なります。納期に着目するのが一般的で、いかに余裕を持った納期設定が出来るかがポイントとなります。
一般管理費
基本的には本社の間接部門の人件費なので固定費の要素が大きいです。一般的には発注量にコストドライバーです。
コスト構造・仕様分析例
コスト構造・仕様分析についてざっくりと理解していただけたかと思います。次は包装資材を例に、具体的な品目で考えてみます。
figure. 包装資材のコスト構造
包装資材のコスト構造を機能軸分析したところ、原材料費が約48%、加工費が約32%、間接費が約10%、配送費が約6%、マージンが約4%占めていました。コスト削減においては一般的に、大きな割合を占めている項目に注目するのと効果的なので、今回の場合は原材料費に注目するのが良いでしょう。
繰り返しになりますが原材料費の場合は、発注量・材質に着目するのが一般的です。包装資材の場合は「サイズ」と「素材の種類」に着目します。
「サイズ」は、縦、横、高さ、厚みによって決まり、発注量に直結します。
「素材の種類」とは、プラスチック(ポリエチレンやポリプロピレン等)や紙、金属等があり、材質に直結します。
これらの点に注目して調達する場合、仕様にも「サイズ」と「素材の種類」の情報が必要となることは明らかでしょう。サプライヤーに問い合わせる際にも、仕様の項目として「サイズ」と「素材」があるかを確認していきます。
ただ、実際の場合は、まずはサプライヤーに「現行の仕様表」を提出してもらいましょう。その仕様表の項目の中にコストドライバーとなる項目がある場合が多いです。仕様表の中のどの項目が、どのコスト構成要素に影響を与えるのか、ヒアリングをとおして明らかにし、コストドライバーを特定していきましょう。もちろんヒアリングの際にも常に仮説は必要なので、実物に触れてコスト構成要素を想像しながら、有効なコストドライバーは何か常に考えておきましょう。