今回は戦略策定フェーズの『ソーシング方針策定』について見ていきます。
目次
ソーシング範囲策定
”太平洋にスイカ3つ”、という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。宇宙全体から見た星の密度を例えたもので、どれくらい星を見つけるために際限なく工数が掛かるかを表した言葉です。コスト削減活動をやるための人的・時間的リソースには限りがあり、それを如何に効率的に使っていくかが、実現できるコスト削減の大小を決定づけます。そこで、より大きなコスト削減効果が期待できるサプライヤー群(宇宙の範囲)を選定することで、その後のコミュニケーションコストが最適化され、結果として効率の良いコスト削減活動が可能となります。
ソーシング範囲の策定は、より大きなコスト削減効果が期待できるサプライヤー群を選定することで、効率的に人的・時間的リソースを活用し、コスト削減を実現するために行われます。
支出分析、サプライヤー市場構造分析によって、適切な軸でサプライヤーを分類・マッピングしました。これをもとに現在のソーシング範囲を確認し、さらに今後重点を置くべきソーシング範囲について検討していきます。サプライヤー市場構造分析、現状取引先分析については、こちらの記事で詳しく解説をしておりますので、ご参照ください。
ソーシング範囲策定により解決される課題と効果
ソーシング範囲策定によって、従来の調達業務の中で見られた課題が解決され効果を発揮する以下のような状況がよく見受けられます。
ソーシング範囲策定実施前に見られる課題
- サプライヤーの主要顧客が自社の業界と一致するサプライヤーセグメントのみをソーシング範囲としていた。
- 自社の発注数量が他産業(特に自動車産業)と比べると非常に小さく、ガバナンスが効かせられないため、売上規模が大きいサプライヤー(売上規模で10億円以上)は調査対象にしていなかった。
- 売上規模があまりにも小さいところ(売上規模で1億円以下)は調査しきれないので、結果として中規模(売上規模で1億円~10億円)のサプライヤーのみをソーシング範囲としていた。
そこで、支出分析、サプライヤー市場構造分析 によって得られた示唆より、従来とは異なるサプライヤー群を対象に最適なソーシング範囲を策定することで、以下のような効果が出てくることが多々あります。
ソーシング範囲策定実施後に見られる効果
- サプライヤーの主要顧客が自社の業界と異なるサプライヤーセグメントに於いて、有望なサプライヤーを見つけることができた。
- 自社の発注数量でもガバナンスを効かせることができる、売上規模の大きいサプライヤー(売上規模10億円以上)にも有望なサプライヤーが見つかった。
- 売上規模の小さい(売上規模1億円以下)サプライヤー群にソーシング範囲を拡大し、コスト競争力に優れたサプライヤーを発掘することができた。
このように偏見を持たず、客観的に周りを見渡すことで、新たなコスト削減の機会を見つけることも可能なのです。