コロナにおける自粛ムードが高まり、人の動きが抑制され、経済に大きな影響を及ぼしております。どの企業様においても、少なからず影響があるのではないでしょうか。そんな中で、観光に携わる企業、特に宿泊業においては客足が遠のき、非常に厳しい状況に直面しています。減収により閉館を余儀なくされる宿泊施設や関係部門の縮小など、苦渋の選択をした事例も耳にします。非常時にこそ、自社の経営体質が浮き彫りになってくるものです。そこで、今回は宿泊業におけるコスト構造を踏まえた上で、効果的なコスト削減方法をご紹介いたします。今回の危機を機に、課題意識をもたれている方にはぜひ今日から実践していただけますと嬉しいです。
出典:「日本旅館協会:令和元年度営業状況等統計調査」
ホテル業における損益
平均的なホテル業における損益(図1)を見ていきましょう。図中左の売上から各種コストが並び、図中右の営業利益までの流れを表しています。人件費、業務費、管理費(濃赤色ボックス)の占める割合が大きいことがわかります。さらに、総支出の内訳(図2)を分析してみましょう。総支出のうち約40%を占めるのが人件費(図2)です。この人件費とは、従業員の給与だけでなく外注・委託費等も含んでいます。宿泊業は労働集約型の産業であることが、一目でわかります。続けて、業務費です。業務費(図2)は約15%で、サービス費、備品消耗品費、衛生費、車両費、水道光熱費などのことです。比較的代替が可能な物が多く、見直しを行いやすい費目です。そして、管理費(図2)は約12%を占めています。リース料、地代・家賃、保険料、事務用消耗品費などのことで、固定的な要素が強いのが特徴です。ここまで、支出割合の大きい費目を見てきましたが、それぞれの費目について、効果的なコスト削減方法をご紹介致します。
①レベニューマネジメントシステムの自動化(人件費)
レベニューマネジメントとは、宿泊需要を予測して収益を最大化するために適切な宿泊料金の設定/管理を行うことです。現状は手書きの台帳や Excelを用いた宿泊料金の管理など、アナログな作業を行っていることも少なくないのではないでしょうか。レベニューマネジメントシステムを自動化することで、業務時間を削減、すなわち人件費の削減を行うことができます。さらに、AIが過去売上実績の分析や競合ホテルの販売価格収集、自動比較を行い、適正な宿泊料金設定による収益向上も図ることができます。宿泊料金の設定/管理は、過去宿泊料金を参考にしたり、属人的な判断によって決めているというところも現実として多くあります。コスト削減/収益改善の両方の視点から、レベニューマネジメントシステムの自動化を検討してみてはいかがでしょうか。
②オンライン予約のみへの切り替え(人件費)
従来は、電話/メールでの直接の問合せや旅行代理店経由での予約ルートが主流でした。しかし、自社ホームページやオンライン旅行代理店(OTA)が普及した今、思い切ってオンライン予約のみに切り替えるというのも一つのコスト削減手法になります。宿泊予約に関する電話やメール対応、予約台帳管理における業務量削減、旅行代理店への営業などの人件費削減が見込めます。予約ルートの絞り込みには勇気がいると思いますが、絞り込むことで集中してオンライン予約への販促強化を行うことができ、結果的に集客増加を実現しているケースも多くあります。その際に気をつけたいのは、オンライン旅行代理店(OTA)に対する手数料(おおよそ10%-15%)の支払い負担です。オンライン予約に絞り込んだ上で、いかに自社ホームページから予約を獲得をしていくか、戦略を練っていきましょう。
③清掃委託の見直し(人件費)
宿泊業においては、欠かせない要素である清掃業務。業者へ委託している場合も多いと思いますが、その見直しを行うのはいかがでしょうか。以前からの慣習で取引を続けているという場合には、積極的に業者の切り替えを検討してみましょう。また、清掃業務を内製化することで、スタッフの中抜け休憩時間を有効活用し、委託費の削減効果を出している宿泊施設もあります。この他、客室に設置するアメニティや備品を最低限必要なものに絞ることで、交換にかかる作業時間をカットすることもできます。冷蔵庫内のミニバー廃止もその一つの方法です。ただし、無闇なサービスの絞り込みは、お客様の満足度低下につながりますので、自社の顧客層を踏まえてサービスの必要性を検討し、取り組みを進めてください。
④清掃頻度低減のためのエコ清掃(人件費)
連泊されるお客様を対象にしたエコ清掃も効果的です。お客様が連泊される場合には、ご要望に応じて、清掃内容を限定/清掃を行わないというものです。清掃頻度の低減により、人件費を抑えることができます。また、後述する「⑤リネンの見直し(業務費)」に記載のリネンの交換頻度適正化」を併せて行うことで、さらなるコスト削減効果が期待できます。環境配慮の側面からもクリーニングを減らすことで節水・CO2削減につながりますので、複数のメリットがある取り組みです。
⑤リネンの見直し(業務費)
入浴時に使用するタオルや宿泊者が身につけるルームウェアの見直しも効果的な手段の一つです。まず、自社内で行うことができる取り組みとして、交換頻度の適正化があります。連泊で交換不要のお客様に協力をいただいたり、未稼働の客室には設置しないなどの対策ができます。また、リネンの委託業者の切り替えも一つの手段です。長らく見直しを行っていない場合には、複数業者から見積もりを取ってみるのが良いでしょう。さらに、モノの見直しも図ることができます。例えばオリジナルのロゴが入っているものを汎用品に切り替えるなどです。ただし、寝具については、お客様の満足度に大きく影響を与え、ダイレクトに評価が返ってくるため、慎重な選定が必要です。
⑥アメニティをフロントにてお渡し(人件費/業務費)
「③清掃委託の見直し(人件費)」内で「客室に設置するアメニティや備品を最低限必要なものに絞る」という手法を紹介しましたが、アメニティを客室に設置せず、フロントでのお渡しに切り替えてみるのはいかがでしょうか。そうすることで、客室への設置業務の削減(人件費)と不要なアメニティのお渡しによる無駄の削減(業務費)を行うことができます。また、アメニティバイキングとすることでエンターテイメント性を持たせ、宿泊施設の一つの特徴として、顧客満足度向上につなげることもできます。
⑦リース品目/料金の見直し(管理費)
営業車や送迎車、PC、コピー機などは自社で購入せず、リースしている場合が多いと思います。そのモノでなくても問題がない場合には、必要なスペックを満たした上で、より安いモノや業者に切り替えを検討してみましょう。また、切り替えが難しい場合でも、長期契約を結ぶことを条件に、リース料を削減することもできます。
さて、宿泊業におけるコスト削減方法をご紹介しましたが、いかがでしたか。
コスト削減の対象となる要素は、至る所に存在していますので、まずは一歩を踏み出して取り組むことが重要です。その効果が自社で働くスタッフの労働環境/条件改善に繋がり、さらにご来館されるお客様により良いサービスとして還元されることを期待しています。
ただ、そうは言っても取り組む時間がない、人員がいないという課題もたくさんあるはずです。そんな時は、是非コスト削減のプロフェッショナルにお声掛けください。
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