新型コロナウイルス感染症の影響により、医療機関の収入は4月以降大きく落ち込んでいます。日本病院会等による調査(※)では、2020年4月の医業収入が前年比▲10.5%に対し、医業費用の減少は前年比▲1.3%に留まり、医業利益率は2019年4月の1.5%から2020年4月▲の8.6%へと悪化しています。このような状況のなか、病院を運営していくためにコスト削減に取り組んでいる医療機関も多いと思われます。しかしながら、非常事態の時に実施する施策の順番を間違えると、更なる状況の悪化を招いてしまいます。患者が減って稼働が下がっている今、実施すべきコスト削減項目の優先順位をまとめました。
※出典:新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況緊急調査
コスト削減は制約の小さい固定費から実施する
制約とは、コスト削減を行う際にクリアしないといけないハードル(時間、お金、部署間の利害関係など)やリスクのことです。制約の大きさと固定費/変動費で分類すると、コスト削減の優先順位は、「①制約の小さい固定費>②制約の小さい変動費>③制約の大きい変動費>④制約の大きい固定費」です。
①制約の小さい固定費
まず手をつけるべきは、病床稼働率に関係なく出ていく固定費のなかで、比較的短期間で削減効果が見込めるものです。主な項目としては、
- 水道光熱費
- 施設管理費
- 清掃委託費
- 警備委託費
- 広告宣伝費
- 通信費
- 各種保守料
- 病棟詰所や管理部門で使用される消耗品費
などがあります。このなかで、年間契約になることが多い施設管理費・清掃委託費・警備委託費・保守料などは、契約更新タイミングを逃すとコスト削減が難しくなるため、契約年数や更新月に注意しましょう。
②制約の小さい変動費
変動費は一般的に稼働が低下すると下がりますが、もともと絶対額が大きい項目も多いため、早めに見直すことが有効です。主な項目としては、
- 臨床検査委託費
- 衛生材料費
- リネン委託費
- 感染性廃棄物処理委託費
などがあります。診療の現場に影響のある項目が多いので、看護部や検査科との連携が重要になります。
③制約の大きい変動費
主な項目は医薬品費と医療材料費です。医業費用の10~20%を占めるため、日ごろからコスト削減の取り組みをしている病院が多いかと思います。そこから更に削減を図るには、医師の全面的な協力が必要になるため制約が大きいですが、品目を絞って実施することで実行スピードが上がります。
④制約の大きい固定費
制約が非常に大きいものの、今後病院が必ず直面する課題が、職員給与費・採用関連費・医事委託費・人材派遣費など人件費関連の支出をいかに適正化していくか、ということです。入院患者数が減少しているにも関わらず満床ベースで人員配置をしていると、収入は減る一方出ていく固定費は変わらないので、経営は厳しくなっていきます。余剰になった看護師を看護助手としてみなし配置し新規加算を届出たり、訪問看護など他事業に配置転換したりして対応している病院もありますが、自病院が将来提供すべき医療機能と病床数をしっかり分析したうえで、ダウンサイジングや看護配置の変更による戦略的な職員数の適正化を行っていく必要があるでしょう。
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