日中は指示を受けるために先生に何度もPHSをかけ、カンファや患者家族対応に時間を取られ、夕方からは委員会や記録に追われて残業…という経験はありませんか?病院のほとんどの業務はコミュニケーションの連続で成り立っていて、そこには必ずコスト=コミュニケーションコストが発生しています。
スタッフ全員がその時やるべきことを理解して自分で動ける組織であれば、コミュニケーションコストはほぼ0です。しかし、そんな病院はありません。例えば看護師は日々、医師・患者・他の看護師・その他職種のスタッフと様々な方法でコミュニケーションしながら業務を行っています(下図)。これら全ての過程がコストと捉えることができます。
コミュニケーションコストが高くなる理由は3つあります。
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基本となる行動指針や価値観が異なる
例えば、退院支援カンファで患者を在宅に返すのか施設に転院させるのかを決めるとき、病院スタッフのなかで基本的な考え方が在宅派と転院派で分かれていると、まず両者のベクトルを合わせるのに大きなコストを要します。全員が「出来る限り在宅復帰を目指す」という価値観を共有できていれば、最初から在宅復帰に向けた議論ができるため、コミュニケーションコストは下がります。
情報の送り手と受け手に格差がある
場所や時間といった物理的な差と、共有する情報に関する差があります。
お互いが違う場所にいると何かを伝えるのに時間がかかるというのは、誰でも経験があるでしょう。外来にいる主治医の先生に至急連絡を取りたくてPHSをかけても診察中で繋がらず時間をロスする、といったことは日常茶飯事です。
情報に関する差については、「情報量」と「その情報を理解し対応するスキル」がポイントです。職種、経験年数、役職などが違うと持っている情報量も当然違うため、この格差を埋めるためのコストが発生します。
また、「この資料を会議の前までに確認しておいて」と指示をしても、十分理解して会議に臨むスタッフもいれば全く読まずに参加するスタッフがいるように、理解力や対応力といった定性的なスキルの差もコミュニケーションコストがかかる要因です。
コミュニケーションの方法が非効率
緊急性が低いのにPHSをかける、不必要な情報も記録する、申し送りシートに記載してある内容を口頭でも説明する、といった「コミュニケーションの方法」も、コスト上昇に直結します。
コミュニケーションコストは目に見えないので普段意識していないことが多いのですが、組織の生産性にとても大きな影響を与えます。業務改善を行う際は、コミュニケーションコストの視点でも考えてみると良いでしょう。