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ETC通行料の削減
高速道路をスムーズに通過するためのETCカード・車載器は、現在ほぼすべての社用車で利用されています。この利用から発生するETC通行料ですが、業務上高速道路をよく利用する企業様では、実は販管費において結構な割合を占める重要なコストになっております。
例えば社用車を100台以上使用している場合、その支払総額は年間で数千万円~数億円ともなり、この支出が適正化されているか否かで、数年~十数年といった単位でみると利益に与えるインパクトには大きな違いが生じます。このような重要コストであるETC通行料は、総務部門の管轄となることが多いようですが、
- 他にコア業務を持っているためETCだけに多くの時間はさけない
- ETCの割引制度が複雑すぎてよくわからない
ことによりサプライヤーとの間に情報の非対称性が生じており、コスト管理がほぼサプライヤー任せとなっている状況が散見されます。
また一般にコスト適正化の際に用いられる、相見積による競争環境がETC通行料の適正化に対しては効果的なコスト抑制手段とならないことも、検討のハードルを上げる一因となっているようです。
このように「大きなコストでありながら、自社での適正化が難しい」という特性をもつETC通行料は、下記に代表されるような、社用車で高速道路を中距離~遠距離で移動する業務の多い事業者において、特に適正化について検討するメリットが大きいと思われます。
- 物流
- 商社
- 製造
- 建設
- メンテナンス
本記事では、ETC通行料のわかりやすい概要と、適正化に向けた主なポイントをお伝えします。
ETC通行料の概要と適正化のポイント
基本となる高速道路の料金はご存知の通り、個人・法人の区別なく車両種別と利用区間で決定されており、相対交渉が利くものではありません。しかし、ETCを利用することで享受できるさまざまな割引制度が設けられているため、結果としてETC通行料は利用状況や契約の仕方によって異なってきます。
つまり、ETC通行料の適正化とは一言でいえば、「いかに自社の利用実態に合わせた契約とし、効率よく割引を受けるか」というポイントに尽きます。
ETC通行料の基本的な割引の構造は、概ね以下のようになっています。
この「X」をどうコントロールするか?がETC通行料の適正化で検討すべき対象となっており、具体的には契約するカード(サービス)の選択によって行います。
ETCの契約種類と最適化に向けた分析
法人が利用できるETCカードの契約は大きく分けると、
A) ETCクレジットカード
B) ETCクレジットカード+マイレージサービス
C) ETCコーポレートカード(大口・多頻度割引)
の3種となります。このうち、A)は通常のETC料金に付加できる割引制度(前述の「X」部分)がないため、契約の選択肢は事実上B)、C)の2種となります。
B)、C)の持つ基本的なメリットは共通して、「利用頻度や利用量に応じた割引が得られる」というものですが、それぞれ大きく異なる性質を持っています。主な違いを以下に例示します。
太字となっている箇所がユーザーに有利・利便性がより高いと考えられる内容です。一見したところ、単純に「利用が多い車両にコーポレートカードを、少ない車両にマイレージサービスを使えばいいのではないか?」となりそうです。確かに概ねその通りなのですが、これに以下の要素を加味して契約を検討しなければ、安定して適切な割引を得られない可能性が高くなります。
- 利用の多さは通年安定しているか?
→限られたいくつかの月だけが突出している場合、通年でみればコーポレートカードが不利に
- 利用区間は大口・多頻度割引対象の道路が中心か?
→利用が首都高速・阪神高速や非対象道路中心の場合、利用額が多くともサプライヤーがコーポレートカードの受託を断るケースも
- 利用は1台の社用車なのか、複数台をまたいで利用した結果なのか?
→コーポレートカードは複数台数をまたいだ使用が不可
- 出張先でのレンタカー利用は含まれていないか?
→コーポレートカードは登録した車両以外に使用不可。部門業務の在り方に照らす必要がある
- 車両の使用者名義は法人か?
→駐車場の関係で使用者名義を個人名としている場合、コーポレートカードは契約不可
この要素を押さえつつ、単月や四半期といった短期間ではなく、NEXCOから通年の利用状況データを取り寄せた上で「どちらが安定してトクなのか」を正確に分析することが、適正化にむけて非常に重要なポイントとなるのです。
ここをサプライヤー任せにしてしまうと、
- 使用実態に対する正しい分析が行われたか判定できない
- サプライヤー(手数料)の有利な契約に偏った判定を行う可能性がある
という懸念(=情報の非対称性が依然として解決されていない)があるため、自社ないしその分析の正当性に付加価値を主張するコストコンサルなど、企業(ユーザー)側の利益に立った担い手が分析を行うべきだと考えます。
偏った、もしくは粗い分析結果をベースに契約すると「サプライヤーの言っていたような割引が得られなかったので、契約をもとに戻したい」といった年単位でのロスを発生させかねません。そして、実際にこのような状況を抱える企業様にこれまで何度もお会いしてきました。
サプライヤーの選び方
法人でETCカードを契約している場合、クレジットカード会社の付帯サービスであることが多いため、あまりサプライヤー選択の余地はありません。かつ、ETCクレジットカード+マイレージサービスの場合、サプライヤーによるサービス差異は大きくないことも特徴です。
一方で、ETCコーポレートカードの採用を検討する場合、そのサプライヤーはNEXCOからカード管理を委託された協同組合・運送組合といった組織に限定(※)され、かつ組合ごとのサービス内容・コストレベルは一様ではありません。
※既にコーポレートカードを契約しており、かつ組合以外が契約先の場合、それはいずれかの組合と企業の商流に契約上介在しているのみで、(機能としては本来不要な)なんらかの手数料が発生しているものと想定されます。
組合ごとの違い、特にコスト面の違いを考える場合には、そもそも組合がETCからどのような収益を得ているのか?を知ることが重要です。
組合は、主にETCコーポレートカードを組合加入企業(ユーザー)が一定以上の利用をすることで発生する、NEXCOからの「契約者単位割引」(上図②)を得ることを収益源としています。しかしながら、その扱いにおいて対ユーザーでは以下のような違いが存在します。
A) 組合が、②契約者単位割引の一部もユーザーに還元し、ユーザーが享受する割引額を増大させる
B) 組合が、②契約者単位割引総額のみを収益とする
C) 組合が、②契約者単位割引総額に加え、ユーザーが本来享受すべき①車両単位割引の一部も手数料として控除する
これらは契約時に企業の担当者へ明確な説明がなされていないことが多く、C)契約でありながら「本来享受できる割引額を得られていない」という事実を把握していない企業様も多々見受けられます。
やはり契約に当たっては、いくつかの候補先から手数料の詳細について説明を受け、かつ運用時のデータ管理・車両管理がしっかりとしており、適切な契約管理を自主的に行ってくれる先をソーシングすべきです。
適正化にむけて(まとめ)
ここまで記した通り、ETC通行料の適正化にむけては、
- さまざまな要素を加味した、企業(ユーザー)側の利益に立った分析…どう買うか
- メリットを最大化するサービス品質の高いサプライヤー選択…誰から買うか
を通じて契約の最適化を図る必要があります。
コスト総研では、上記二点ともワンストップかつ全ての作業をアウトソースいただく取り組みが可能ですので、ご関心をお持ちの企業様からのお問い合わせをお待ちしております。
寄稿:アスピレーションアベニュー合同会社