近年、診断技術やITの革新によって医療の高度化・効率化が進んでいますが、同時に医療機器やITシステムの導入・運用にかかるコストは病院経営の大きな負担になっています。日本病院会が平成28年度に実施した会員調査によると、日本の医療機関全体における医療機器等関連費用(減価償却費、保守費等)は年間1兆9,121 億円余、IT 関連費用は年間6,848億円で合計2兆5,969億円となり、医療機関のコスト総額の約9.9%を占める結果となりました。多くの病院では人件費・医薬品費・医療材料費に次ぐ額となり、コストマネジメントの点でも重要な項目です。まずは全国の病院が医療機器や医療情報システムにどのくらいコストをかけているか、経営母体別に100床あたり金額で見てみましょう。
※医療機器:エコー、MRI、CT、X線装置
※医療情報システム(IT):電子カルテ、オーダリングシステム、各部門の業務システム等
医療機器保守管理費用の合計額は年間5,500万~1.35億円/100床
まず、医療機器保守管理費用の合計額は、民間病院で年間約5,500万円、公的病院で年間約1億円、国立病院で年間約1.35億円と、経営母体によって大きな差があります。国立病院や公的病院には大規模病院も多く医療機器が高度化するため、保守管理費用も上がる傾向があることが考えられますが、民間病院の方がシビアに価格交渉などのコストマネジメントをしているのも事実でしょう。また、国立・公的病院は減価償却費、民間病院はリース料の割合が多いことも特徴です。国立・公的病院は国や自治体の予算からの購入が多いためと考えられます。
医療情報システム(IT)全体の費用合計額は年間1,800万~4,800万円/100床
次に医療情報システムですが、費用合計額が民間病院で低く(年間約1,800万円)、国立病院で高い(年間約4,800万円)傾向は医療機器と同様です。医療情報システムはMRIやCTなどの医療機器と異なり、稼働させても診療報酬で評価されないため、病院の収益向上には直結しません。そのため、医療情報システムを導入・活用することによる効果を試算し、費用対効果を事前に検証することが重要になります。
医療機器や医療情報システムの保守管理は費用内訳がブラックボックスで、詳細なベンチマークが難しい現状があります。コストマネジメントをするうえで、このような全国の平均値を参考にするのも有効な手段になるでしょう。
(出典:日本病院会「平成28年度医療機器・医療情報システム保守契約、費用に関する実態調査」)