2019.08.07

荷主企業にとっての物流とは

物流というフィールドには様々なプレイヤーが存在し、日々活動を行っています。当然ながらその活動の一つ一つには必ず「目的」があります。

例①) A社埼玉工場からF社福岡工場へ原料を出荷
目的:原料を調達して製品をF社工場で製造するため

 

ではここで1つ問題です。例①で登場する人数を、物流という側面で捉えると何人になるでしょうか?

Ans.およそ7人~

各社の作業手順や体制によって関わる人数には差が生じます。ここで前例に一言だけ加えて目的を少し変えてみましょう。

 

例②)A社埼玉工場からF社福岡工場へ緊急で原料を出荷
目的:原料を緊急で調達して製品をF社工場で緊急で製造するため

 

では、改めて考えてみましょう。例②で登場する人数を、物流という側面で捉えると何人になるでしょうか?

Ans.およそ20人~

同じ行為でも目的が違うだけで、関わる人数には大きく差が生じます。更に言うと、管理者や事務作業、配車マンなどを加味すると、もっと人は増えてきます。つまり、一つのモノを動かすという単純な活動でも、これだけ多くの人の手を介するということです。それだけ物流には必然的にコストがかかってしまうというものです。

この物流という活動に対して、コスト削減を実行するにあたり、理由なき値下げ交渉をするのはナンセンスです。細かい作業の一つ一つに作業原価があり、利益や手数料等を載せた金額を積み上げて算出しているものであるからです。単純な値下げ交渉は、「おタクの利益を下げる代わりにウチに還元しろ!」という、何とも不憫なものとなってしまいます。

この例でいうと「荷主」という立場のプレイヤーは、A社でもあり、F社でもあります。言い換えれば、委託者=荷主ということになります。物流事業者と荷主の立場では、物流の捉え方が変わってきます。特に、物流を事業者に任せっきりにする荷主には、物流=コスト・手間と捉えられているため、出来て当たり前と思われます。コスト削減の活動を進める上で、物流事業者に対して「値下げしろ!」というだけでは、一時的に物流事業者が値下げを受け入れても、大抵は長続きしません。なぜなら、物流事業者にとっては、物流=ビジネスであり、その活動に利益が見込めないのであれば利益創出のための活動を進めることになるからです。

とは言え、荷主にとって物流コストは経費の中でも大きな比率を占めているものです。かつて、経営学者のピーター・ドラッカーは「ロジスティクス(物流)は経済の暗黒大陸」と表現されました。それだけ、社会において全容が見えない活動が物流ということです。荷主の本音としては、「本業に集中するために物流を切り離して丸投げしてしまいたい」という思いもあります。それだけ物流には深く広い学習が必要であり、中長期的な目線が必要になります。

私がこの物流について表現すると「物流=ブランディング」と、よくお話をします。物流は企業にとっての考え方が凝縮する活動であり、物流に情熱を注いでいる企業ほど、自社の商品やサービスに対しての飽くなき探求心を持ち、高い意識の下で経営における活動が進んでいるものです。物流という活動を企業の経営戦略の一つと認識し、物流を活用してより良い商品やサービスの提供・開発を常にアップデートしています。「物流を制する者が市場を制す」「物流を制する者がビジネスを制す」と、経営戦略上最大の課題と認識している企業が徐々に増えてきています。テレビCMやドラマでも物流センターの構内を映したり、ドライバー応援型アイドルグループなるものが誕生することになったり。。。

※出典:タイヨーロジスティック株式会社HP「ドライバー応援アイドル募集!!」より引用

余談ですが、有識者や物流について表現するものの一例で、「物流=インフラ」と言われているのを良く見聞きします。私は、この「物流=インフラ」という表現はあまり好きではありません。なぜなら、インフラとされているところに荷主企業やこれから物流業界に入ってきてくれる人たちにとって、魅力と感じないからです。私にとっては「物流=企業ブランディング」であり、周りから見聞きして他に良いと思ったのは「物流=戦略」と考えている方。また私の尊敬する大先輩は「物流=エンターテイメント」と言い切ります。みんなが楽しめる物流業界をつくりたいと本気で考えられていて、私も凄く刺激を受けます。

荷主にとっては、まだまだ「物流=コスト」「物流=手間」「物流=ノータッチ」という考えが、少なからずあります。しかし、それを物流事業者が「ウチの荷主は物流=手間と考えているからダメなんだ!」と、突き放すだけではずっと変わりません。物流事業者が荷主と寄り添い、時にはワガママを受け入れ、時には物申す。物流事業者の悪い癖で、ただただ荷主に話をすれば解決していくと考えてしまいます。荷主とのコミュニケーション=交渉と考えているからです。普段からお互いの関係づくりに注力し、良きビジネスパートナーとしてお互いに成長を助け合う様な間柄になってこそ、お互い良い仕事が出来るというものです。

まず、荷主の立場として物流を見ている方たちは、自分の会社にとって物流とは何かを考えてみてください。それがポジティブなものであれネガティブなものであれ、自社の物流に対する考え方の現在地を知ることが最初の一歩だと私は考えます。

今は、「物流=コスト」で良いです。それを「物流=インフラ」に持っていくのも良いです。自分の会社の目標は「物流=〇〇」と言えるくらいになると、もっともっと仕事が面白くなりますよね。

記事をお読みになった方へ

コスト総研では、コスト削減にご興味のある皆様に
「簡易コスト診断」「資料ダウンロード」「コンサルマッチング支援」
無料にて ご用意しております。詳しくはこちらをご覧ください。

資料ダウンロード

コスト削減の基礎から応用までを体系的に学ぶことができる、
コスト総研オリジナルの資料です。