今回は物流機能の中で「保管」にフォーカスして削減活動のポイントなどを学びましょう。商品を保管するという何とも単純な機能ですが、そこには様々な考え方、方法、ツールが存在します。
単位を考えると、一般的に「坪建て」と言われる、荷主が保管に何坪使っているかを計算するもの。「個建て」という1個あたりの保管料を決めて計算するもの。個という単位は「箱」であったり「パレット」であったり、荷主がどれに適しているかを3PL事業者が分析をした上で個の定義を決定して計算します。冷蔵や冷凍保管で多く用いられる「立米建て」という、1立方メートルごとに計算されるもの。
大きくはこの「坪建て」「個建て」「立米建て」の3つに分かれます。最も多いものは「坪建て」になりますので本コラムもこの「坪建て」をベースとして考えていきましょう。
近年、高速道路のIC付近に超スピードで物流施設の建設が進んでいます。「メガ物流センター」とも言われ、猛烈に発達する通販市場、輸出入、国内外問わずモノの流通に多大な貢献をする物流センター。その物流センターに商品が保管されているのですが、1つのセンターの中で商品が占める面積の割合は、約50%前後と言われています。つまり、物流センターの中の半分は商品が置かれていないということになります。
どういうことでしょうか?
※画像出展:株式会社センターポイント・ディベロップメントHPより
物流センターを機能させるには、商品を保管するスペースの他に、様々な機能が必要になります。通路、作業スペース、事務所、エレベーター、着車スペース、備品置き場、資材置き場、などなど、他にもまだまだあります。また、必要なモノを取るには置かれた場所に向かうための通路が必要です。この様に全ての面積に対して商品を置くことは出来ません。
更に、商品や備品、資材などを置く際に、横に広げて置いていくとかなりの面積が必要になりますが、縦にモノを積み上げて置くと、面積が抑えられます。しかし、高く積み過ぎてしまうと下段のモノに荷重が多くかかり、箱が潰れてしまったり、商品が傷んでしまう場合もあります。現場ではパレット保管用のラックなどを用いて、商品を傷めずに高く積んで保管する努力をします。横に10パレット広げて置くより、縦に2~3パレット積んでから横に広げた方が面積は少なく済みます。
※画像出展:株式会社ジャロックHPより
つまり、保管コストを削減するためには、いかに商品保管以外のスペースを効率的にし、且つ、天井高を有効に使って保管効率を高く出来るかがポイントになります。1坪に1パレット置くより、1坪に2パレット置く方がコストも抑えられますよね。
荷主側としては、3PL事業者と契約した坪数に対し、少しでも多くの商品を保管したいもの。しかし一方の3PL事業者としては効率よく作業を進めるために、通路を広くとっていきたいもの。この二者で「真逆のニーズ」を少しでも近づけるために、双方の努力が必要なのが保管という物流機能です。
筆者は仕事柄、物流センターの視察をさせて頂くことが多くあります。
中には、商品を載せたパレットが床一面に張り巡らされていて、通路はと言うと人が1人やっと通れるくらいの狭い通路が迷路の様に通っている状況の物流センターもあります。そんな状況のセンターでも、キチンとパレット積みの定数やルールを決め、正確にレイアウトを組んでみると驚くほどスペースが生まれ、適正な通路も確保できたという例もあります。というか多々あります!
通路には、作業をする人とパレットを搬送するためのフォークリフトが同時に通るため、最低でも2.5m以上は確保しなければ作業が出来ません。
物流センターで良くみられる例の一つに、この通路が広すぎることがあります。物流センターの方に話を伺うと、人との接触や、商品の破損を防止するために広く通路を確保しているという理由です。
良く分かります。
しかし、筆者の経験上では通路が広すぎるとフォークリフトの走行中に、安全な速度を保たずに走行したり、前後左右の目視確認をせずに操作したりが多くなり、かえって危険な状況を生んでしまうことが多いです。歩行者も広い通路だからなのかフォークリフトにかなり接近して作業をしたり、阿吽の呼吸の意味を履き違えて作業をする場面を多く目にします。
余裕が油断を呼んでしまうのでしょう。自動車でも広い道路を走行するより狭い道路を通る時の方が慎重にゆっくり走行しますよね?
こういう例があるため、筆者はレイアウトをつくる際には、狭すぎず広すぎずの適正な通路(おおむね2.5~2.7m)とするように心がけて図面をつくります。
※参考資料:VisioデータSample
パレットを縦に3段程度積み、通路を30㎝縮むだけで保管スペースは劇的に広くなります。
3PL事業者において新たな荷主を獲得し、現場の設営を行う際に、図面を用いずに現場のカンコツで進める例がかなり多くあります。そんな現場を見かけると、「勿体ないなぁ・・・」と、少し残念に感じます。
荷主と3PL事業者の「真逆のニーズ」を解消するためにも、3PL事業者からは説得力のあるご説明とするために、一刻も早く現場の設計にレイアウト図面を用いてプランを作成することを3PL事業者には強く求めたいを筆者は思っています。