働き方改革の具体的な方策として注目されているタスク・シフティング。今回の改定で「タスク・シェアリング/タスク・シフティングのためのチーム医療等の推進」という項目ができ、診療報酬でも病院の働き方改革を後押しする流れになりました。主な改定内容は次のようになっています。
①医師事務作業補助体制加算
- 結核病棟、有床診療所、回復期リハ病棟、地域包括ケア病棟、精神科病棟でも算定可能に
- 全ての医師事務作業補助者体制加算の点数が現在から+50点
「2」は、既に医師事務作業補助体制加算を届け出ている平均稼働300床、平均在院日数15日の急性期病院を例にすると、約360万円の増収になります。タスクシフト先である医師事務作業補助者(クラーク)の活用を促進する狙いがありますが、今回の評価アップでもこの加算のみでクラークさん全員の人件費を賄うことはできません。クラークと業務分担をすることで医師の生産性を上げることがこの加算の本質です。
(参考:病院におけるタスクシフティングの考え方)
②麻酔管理科Ⅱ
- 麻酔を担当する医師の一部の行為を、適切な研修を修了した常勤看護師が実施しても算定可能に
- 麻酔前後の診察を当該医療機関の常勤麻酔科医が実施した場合も算定可能に
「1」は麻酔科医から看護師へのタスクシフトを推進する内容です。「一部の行為」とは、これまで中医協総会で議論されてきた項目になる見込みです(下図)。しかし、麻酔管理料Ⅱは算定要件が厳しく、あまり算定されていないのが現状です(例えば、外科の医師が硬膜外麻酔や全身麻酔をかける場合、常勤の麻酔科医が患者と同室にいて管理しなければならない)。一般的に算定されている麻酔管理料Ⅰには適応されませんが、将来的には麻酔管理料Ⅰにも拡大されていく可能性が高いので、今から特定看護師の育成や確保に取り組むとよいでしょう。
※出典:https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000577665.pdf
※出典:https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000577665.pdf
③看護職員夜間配置加算、急性期看護補助体制加算等
- 看護職員夜間配置加算(地域包括ケア病棟、精神科病棟含む):+10点
- 急性期看護補助体制加算:+30点
- 看護補助加算:+12点
- 夜間看護加算(療養病棟):+10点
- 看護補助者配置加算(+10点)
急性期病棟における各加算の増点によるインパクトは、平均稼働300床の病院の場合、+10点で約1,100万円増収、+30点で3,300万円増収です。
■人を増やすだけでなく、病院全体の生産性向上の取組みを
これまで重要テーマの一つとして何度も議論されてきた割には、急性期看護補助体制加算を除いて小粒な改定に留まった印象があります。全体としてタスクシフト先として重要になる医師事務作業補助者、特定看護師、看護補助者の人件費負担が多少軽減される改定内容ですが、実際にタスクシフトが実現できるかは、各病院の取組み次第です。ただ職員の人数を増やすだけでは意味がありません。今回の改定を追い風にするためには、確実に業務移譲を行い、生産性向上を図っていく実際のアクションが必要になるでしょう。