2020.04.27

お金と時間、どちらが大事?

  今回も私生活におけるコストについて考えてみましょう。

 皆さんは「コスト」と聞いてまず何を思い浮かべますか?普段の生活でなら家賃、食費、水道光熱費…、会社なら人件費、原料費、物流費…などでしょうか。確かにこれらは間違いなくコストであり、しっかりと最適化を図っていきたい部分です。しかし、コストから連想されるのがこれらだけだと大きく足りない部分があります。

 本記事のタイトルから察した方もいらっしゃるかもしれませんね。上の例で挙げた中で抜け落ちているもの、それは「時間」です。挙げた例はお金に関することばかりになってしまっていますが、何をするにも「時間の消費」が付きまといます。当然この記事を読んでいる時間もですし、「コスト削減、何しようかな」と考えている時間もです。つまり、コスト削減をするに当たって本当に考えなければいけないのは「一定の効用を生み出すために、どれだけのお金とどれだけの時間を割くか」のバランスであるということです。「効用」というのは企業であれば売上あるいは利益、個人で言えば様々な「満足感」であると思ってください。もう少しフランクな言い方をすれば「何かをするに当たって、時間をかけてお金をセーブするか、お金をかけて時間をセーブするか」を考えるということになります。

 ここで一つ注意しておきたいのが、企業に関しては毎年(or四半期ごと)の決算があり、ある意味で「使う時間(=従業員数 × その期間内の1人当たり労働時間)」が決まっておりその中で(あるいは拡張して数年単位で)どれだけ費用を落とせるか、という話になってきているため、自然と時間は考慮されていることが多いです。当たり前ではありますが、1年で10億円利益を出すことと4年で10億円利益を出すことは違いますし、100人の企業での年間利益10億円と1,000人の企業での年間利益10億円は違います。

 しかし、私生活となるとどうでしょう。例えば「200円の電車代を浮かすために2駅分歩いて節約」といったことを習慣づけている人は少なくないと思います。細かい節約をしつつ、運動不足を解消したりという目的が主でしょう。ですが、状況によってはこの2駅分のウォーキングにかかる時間を他のことをする時間に充てた方がより満足感がある(幸せである)可能性はないでしょうか。

 例えば、家庭を持つサラリーマンを想像してみて下さい。普段は残業が多く、毎日帰宅するのは深夜。2歳になる娘は自分が仕事から帰る頃にはぐっすり眠っていて、遊んでやることもできません。しかし、今日は珍しくプロジェクトの合間でタスクも少なく、電車で直帰すれば19時には家に着きそうです。こんな時、本当にたった200円を浮かすためだけに帰宅を30分遅らせる必要があるでしょうか?もし夏だったら、さらに汗をかいて帰宅してすぐシャワーを浴びたくなるかもしれない。そうしたら、滅多にない娘の相手をしてやれる時間が更に減ってしまう。しかも、そもそも30分使って200円しか得しないなら、30分残業した方がマシかもしれません。個人差はあるかもしれませんが、多くの人は早く娘(家族)に会いたい、とできるだけ早く帰る選択肢を選ぶのではないでしょうか。(ちなみに、あくまで例え話なので「通勤定期があるから200円を浮かそうという思考がそもそもないだろう」というツッコミはご遠慮願います。)

 序盤で述べた「何かをするに当たって、時間をかけてお金をセーブするか、お金をかけて時間をセーブするか」という考え方がここで効いてくるわけです。今この瞬間で一番必要なのが時間なのかお金なのか、その価値判断を素早く行う必要があります。敢えてもっとはっきり言うなら「お金と時間のどちらを優先するかの判断基準」を持つということです。ただし、この判断基準を設定する前にまず今の自分の身の回りの状況をしっかり把握し、制約条件を整理する必要があります。上で挙げた例のような状況でも人によっては、時間を消費してでも節約しないといけない事情があるかもしれません。

 この具体例でイメージを掴んでいただいた上で、今一度お金と時間のトレードオフについて考えてみましょう。今回はある程度一般化した形で理解いただけるように、オーソドックスな判断基準になり得るフレームを下のような表にまとめてみました。

この表の横軸の区切りに関しては、「生活にどうしても必要なもの」「生活に必要ではないが、あったら嬉しいもの」「生活に必要ではなく、あったら嬉しいがそんなに優先順位は高くないもの」それぞれに対して支払う金銭的・時間的コストだと思っていただくと良いかと思います。

 このフレームの境界はあくまで人によって・その時々の状況によって変わってきます。

 例えば、生活をするのに精一杯の人は労働と休息のサイクルで精一杯で、趣味にかけられるお金・時間がほとんどないかもしれません。逆に、余裕のある人は労働時間を削って趣味の時間を増やせるかもしれません。

 つまり、自分の経済状況・家庭環境などを鑑みた上で「どこまでは必要」「余った分のお金・時間はこれにかける」という判断基準を持ち、お金・時間という限りある資源をどこにコストとして投資するのかを決めていくことが、単なる「出費減」という意味を越えたコスト削減に直結するということです。冒頭でも書いた表現なのですが、まさにコストの「最適化」と言えるでしょう。

 この考え方に従うと、例えば家事代行を雇う人は「家事に時間を払うよりもお金を払う方が安い」という判断によってコストの最適化を図っていることになります。一方で「家事が楽しくて趣味である」という人にとっては家事代行を雇うということは趣味に使う時間を放棄した挙句不必要な出費をすることになるので、そのような判断は普通しません。

 さて、ここまでは日常生活に絞った議論をしてきましたが、この考え方は一部で企業でのコスト最適化にも通じる部分があります。例えば、出費という意味のコストを減らすことだけを考えるのであれば、原料・加工費・物流費・販促費…など「費用」と名のつくもの全てを一から精査し、全品目について品質を保てる中で一番安いサプライヤーと取引する、ということになりますが普通はそんなことはしません。なぜなら、重箱の隅の費用削減に莫大な時間をかけるよりも、効率よくバッサリ切れる部分だけを確実に切って残りの時間は新製品開発やブランディングなどに回した方が、結果として効用が高く(=利益が大きく)なるからです。

 つまり、日常生活においても企業活動においても、お金と時間のバランスに敏感になり、いかにより新しいこと・面白いことに投資をできる体勢を作っていくかが重要だということになります。

 

 いかがでしたでしょうか。普段の生活で「お金を払っている」という感覚は意識しやすいですが、「時間を払っている」という感覚を持つことは珍しいと思います。しかし、お金と時間を天秤にかけることを意識すれば、本当に時間をかけてでもやりたいことが見つかるかもしれませんね!(自戒を込めて)

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