2016年の規制緩和以降、敷地内薬局を作る病院が全国で増えています。敷地内薬局は病院経営にどのようなメリットがあるのでしょうか?
目次
そもそも、敷地内薬局とは?
敷地内薬局とは、その名の通り、「病院の敷地内にある薬局」です。これまでの医薬分業、かかりつけ薬局推進の流れのなか作られた保険薬局の構造規制が、「保険薬局の独立性と患者の利便性の向上の両立」を図る観点から見直しが行われ、2016年10月1日より適応になりました。
ちなみに病院の敷地内にあっても、次のような場合は認められません。
- 当該薬局の存在や出入口を公道等から容易に確認できない場合
- 病院の休診日に、公道等から当該薬局に行き来できなくなる場合
- 実際には、その病院の患者の来局しか想定できない場合 等
出典:https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/wg/iryou/20161115/161115iryou03.pdf
敷地内薬局に関連する診療報酬・調剤報酬
院外処方の病院であれば、薬局に対して処方箋を発行する際の報酬は、敷地内薬局でも門前薬局でも「処方箋料(一般的に68点)」で同じです。一方、その処方箋を受けて薬局が調剤を行う際の調剤基本料は、敷地内薬局が「特別調剤基本料」、門前薬局が「調剤基本料」となり、敷地内薬局の特別調剤基本料の方が低くなります。
病院が敷地内薬局を作るメリット
病院が敷地内薬局を作ることで、一般的に次のようなメリットがあります。
- 家賃収入の獲得
新しい収入源として、家賃収入を得ることができることが大きなメリットの一つです。更に、薬局側が建物を建築する契約の場合、病院にとっては初期コストをほとんど負担せずに敷地内薬局を誘致することができます。
- アメニティの活用
薬局の2階などに会議室やカフェを作ることで、病院スタッフや患者もその設備を使うことができ、職員満足度や患者満足度向上につながります。
- 薬局グループのサービス活用による経営改善
薬局によっては、医薬品の共同購買や人材の派遣サービスを提供しているグループがあり、それらサービスを活用することで、病院の医薬品費削減やタスクシフティングなどの経営改善が可能になります。
- 薬薬連携の推進
病院薬剤師と薬局薬剤師の物理的な距離が近くなることで、顔の見える関係が構築しやすくなります。病院からの処方箋に対する疑義確認や患者情報の共有が門前薬局よりも容易になり、お互いの業務もスムーズになります。
- 患者の利便性向上による満足度UP
これまで公道を渡って薬を受け取る必要があった患者にとっては利便性が大きく向上します。また、調剤基本料が門前薬局より少し低くなるので、患者によっては医療費が安くなる場合もあります。敷地内薬局を患者サービスの一環として打ち出すことで、患者満足度向上につながります。
留意点やリスクも検討したうえで判断を
一方で、注意すべき点もあります。例えば、敷地内薬局の誘致には土地の権利が絡むため、不動産関係で特殊な事情がある場合は制約になるリスクがあります。また、その地域や病院でかかりつけ薬局を強力に推進しているような場合は、関係者の意向や将来の戦略と齟齬がでないよう事前に十分意見交換することが重要です。
上述のような留意点やリスクをしっかり認識し対応することができれば、特に土地が有効活用できていない病院や薬剤部・患者のニーズがある病院にとって、敷地内薬局は有益な選択肢となるでしょう。