今回は、私たちの身近な製品の多くに使われているメッキについてと、メッキ業界が長年抱えている課題である『コスト削減』と『環境負荷低減』を実現する最新技術をご紹介します。
目次
メッキとは
さて、メッキと聞くと皆さんはどのようなものを想像しますか?あまりピンと来ないかもしれませんが、メッキとは「表面処理の一種で、金属を使って、金属やガラス、プラスチックの表面に薄い膜をコーティングして、新たな機能を付与する技術」のことを指します。
実は、この技術は私たちの生活の周りで非常に多く使われています。
例えば自動車。フロントグリル、バンパー等の外装部品からハンドル、ドアトリム等の内装部品に至るまで多くのメッキ部品が使用されています。自動車以外にも家電製品、アクセサリー、日用品等に至るまで様々なものに用いられ、最先端の科学分野では、電子部品や5G関連製品の回路設計等幅広い分野で使われています。
メッキは錆を防止する(耐食性)、外観を良くする(装飾性)、色を付ける(着色性)ことができます。そのため、身近なものに多用され、メッキ技術は私たちの生活に必要不可欠なものであると言えます。
その歴史は古く…紀元前のメソポタミアの時代から装飾用として使われていました。日本においては、752年に東大寺の大仏に金メッキが施されています。
メッキ業界における課題
はるか昔から我々の生活に密着し、発展してきたメッキ技術ですが、化学物質を扱う分野であるがゆえに、様々な課題の解決が求められてきました。その中でも大きな2点が以下となります。
課題① コストの削減
メッキ技術は世界的に需要が高まりつつあり、特に近年新興国での需要が高まっています。そのため、多くの製造分野で製造拠点が海外にシフトしているのと同様に、メッキ業界でも、コスト削減のため拠点が海外へと移りつつあります。
また、新興国のさらなる需要を開拓していくためには、メッキ製品を低価格で提供できるよう、コスト低減が必須です。さらに原材料の高騰によって加工メーカーの収益が圧迫されている実情もあり、その観点からもメッキ業界におけるコスト削減が課題となっています。
課題② 環境負荷の低減
現代の最先端分野にも幅広く使用されているメッキですが、このメッキ業界においても他分野と同様、環境に対する意識が日々高まっています。代表的な事例として、欧州のRohs指令が挙げられます。これは電子・電気機器に使用される化学物質への規制のことで、環境意識の高まりによって、この規制は年々厳しくなっています。
メッキ技術はその製造過程で多くの化学薬品を使用しているため、いままでも環境対応が求められてきました。
そこで環境対策として、廃液をクリーンに処理する技術や、有害な重金属を含まない環境配慮型薬品が開発されています。
コスト・環境負荷低減技術
メッキ業界の抱える長年の課題を解決すべく、コスト削減と環境負荷低減を両立する革新的な技術が開発されました。
この技術は、メッキの製造過程の一つである『無電解メッキ』で使用されるパラジウムの量を劇的に減らすことができます。後述しますが、このパラジウムは大変希少で高価な貴金属です。
この技術は、導電性素材による前処理を行うというもので、従来の無電解メッキプロセスに比べて約90%以上もパラジウムの使用量を削減することに成功しました。
パラジウムとは・・・
プラチナなどの白金族グループに含まれる埋蔵量が少ない貴金属の一つです。最も使用されているものは、ガソリン自動車の排気ガス浄化触媒です。パラジウムは排気ガスに含まれる一酸化炭素や炭化水素をクリーンなガスや水に変える機能を持っています。
このパラジウムは、主に下記の3つの理由を背景に年々高騰を続け、今や金よりも高い金属となっています。
高騰理由① 原料の希少性
ロシア、南アフリカからの供給量が全体の8割以上を占め、生産地が偏っています。
高騰理由② 需要増加
欧州や中国の自動車の排ガス規制強化とそれに伴う脱ディーゼル車の動きにより、ガソリン車の需要が高まっています。そのため、排ガス浄化触媒の需要も高まり、その触媒に使用されるパラジウムの需要が増加しています。
高騰理由③ 供給不足
パラジウムの採掘は単体では行うことができず、ロシアでは銅やニッケルの副産物として、また南アフリカではプラチナと共に生産されています。そのため安定的に供給することが難しい貴金属です。プラチナはディーゼル自動車用触媒に使用されていて、欧州でのディーゼル自動車の需要減少によりプラチナの産出量が減り、その影響を受けてパラジウムの産出量も減少しています。
以上の理由から今後も価格上昇は続くことが予想され、パラジウム使用量を減らすことでメッキプロセスのコスト削減に貢献します。
パラジウムを使用して作られるメッキ製品は、そのほとんどが消耗品であるにも係わらず、リサイクルをするシステムが確立されていないため、希少なパラジウムのリサイクルができていません。そのため、製造過程でパラジウムの使用量を減らすという技術は、希少な金属の使用を抑えることができ、環境負荷を低減することに寄与すると考えられます。
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