入退院支援を評価する加算・指導料のなかで最も重要な「入退院支援加算」。今ではほとんどの病院が入退院支援部門にスタッフを配置して加算を算定していますが、その算定件数には大きなばらつきがあります。病院の機能や疾患構成による部分もありますが、ポイントを抑えることで算定件数を効率的に増やすことができます。
目次
退院困難患者の抽出基準を厳しくしすぎない
入退院支援加算を算定するには、まず入院後3日以内(入退院支援加算2は7日以内)に、退院困難な要因を有する患者を抽出することが必要です。退院困難な要因として、下記11項目が定められています。
- 悪性腫瘍、認知症又は誤嚥性肺炎等の急性呼吸器感染症のいずれかであること
- 緊急入院であること
- 要介護状態であるとの疑いがあるが要介護認定が未申請であること(介護保険法施行令(平成10年政令第412号)第2条各号に規定する特定疾病を有する40歳以上65歳未満の者及び 65 歳以上の者に限る。)
- 家族又は同居者から虐待を受けている又はその疑いがあること
- 生活困窮者であること
- 入院前に比べADLが低下し、退院後の生活様式の再編が必要であること(必要と推測されること。)
- 排泄に介助を要すること
- 同居者の有無に関わらず、必要な養育又は介護を十分に提供できる状況にないこと
- 退院後に医療処置(胃瘻等の経管栄養法を含む。)が必要なこと
- 入退院を繰り返していること
- その他患者の状況から判断してaからkまでに準ずると認められる場合
病院によっては、当てはまる項目数をスコア化し、ある基準以上の場合に入退院支援加算の算定対象としている場合がありますが、上記項目のうち一つでも該当していれば算定対象になるため、抽出基準を厳しくしすぎないことが重要です。
カンファレンスを効率的に運用する
次に、入院後7日以内(入退院支援加算2はできる限り早期)に、多職種でカンファを実施する必要があります。カンファに必ず参加する必要がある職種は、
・病棟看護師
・病棟に専任の入退院支援職員
・入退院支援部門の看護師・社会福祉士
です。ここでよく問題になるのが、「今より多くの患者を対象にすると時間内にカンファが終わらない」というケース。確かに対象患者が多くなるとカンファの時間も長くなってしまいがちです。この場合は逆の発想で、「時間内に終了させるにはカンファをどう運用すればよいか」を考えましょう。このとき鍵を握るのが、病棟専任の入退院支援職員です。効率的に算定できている病院の多くは、入退院支援職員がカンファ前に対象患者のリストアップ、患者別の基本情報や必要な退院支援等の情報を全てまとめておき、実際のカンファでは必要な項目のみ共有する形をとっています。
退院支援の認識を統一する
退院支援計画ついては患者または家族のサインをもらうこと、そしてその計画に基づき、必要に応じて退院・転院先医療機関との連携や、介護サービス・障害福祉サービス、地域相談支援・障害児通所支援の導入に係る支援を行うことで算定ができます。
この時、退院支援の定義を厳しく考え過ぎていたり、入退院支援職員によって認識が異なったりしていると算定件数が上がりません。院内で退院支援の認識を統一することが重要です。
入退院支援加算で評価される退院支援は、特別な行為ではなく、患者が適正な場所に適正な入院日数で退院して頂くために行うあらゆる支援を含みます。また、退院後の利用サービスについては、その可能性について検討すれば、結果的に利用しなくても問題ありません(検討すること自体が退院支援です)。そして看護師だけでなく、リハビリ、栄養士、薬剤師、SWなど他職種のアプローチも評価対象です。
退院支援計画書のフォーマットを効率化する
厚生労働省が公開している退院支援計画書の様式はフリー入力部分が多く、記入に時間がかかるため、自病院に合う形に改良しましょう。自病院で多いケースを標準化し、チェックリスト方式にすることで書類作成時間の短縮に繋がります。なお、退院支援計画書に空欄があると、共同指導で指摘される原因になります。退院支援計画書をチェックリスト方式にする場合も選択肢を出来るだけ網羅し、空欄を作りにくくすることがコツです。
目標値を設定する
最後に、算定件数の目標値を決めましょう。多くの病院では、退院困難な要因のうち「a」「b」「j」が大多数を占めるため、その3要因のいずれかに該当する患者には100%算定するように目標を立てることで、現実的な取り組みができます。
入退院支援加算の算定を前提にこれまでの入退院支援業務を見直すことで、業務の効率化にもつながります。コツをおさえて生産性向上を図っていきましょう。
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