2022.04.11

2022年度診療報酬改定と今後の病院経営戦略②~地域包括ケア編~

2022年度(令和4年度)診療報酬改定では、地域包括ケア病棟に求められる役割が改めて明確になりました。該当医療機関の多い、地域包括ケア病棟入院料1の200床未満病院と地域包括ケア病棟入院料2の200床以上病院を例にすると、主な改定内容は以下のようになります。

目次

地域包括ケア病棟には3つの機能が全て必要

地域包括ケア病棟には、①急性期治療後の受け入れ(Post-acute)、②在宅からの受け入れ(Sub-acute)、③在宅復帰支援の3つの機能を果たす役割が求められています。しかし、これまでは①post-acute機能に偏重しすぎていたこともあり、今回の改定では②sub-acuteと③在宅復帰支援機能の強化が必要となりました。今後の地域包括ケア病棟は、①から③の3つ全ての役割を果たしていかなくてはなりません。

在宅からの受け入れ(Sub-acute)の実績をどう作るか

今回の改定で、200床以上の病院は、自院の一般病棟からの転棟患者を60%未満に抑えないといけなくなりました。つまり、残りの40%は他の急性期病院や在宅等からの直接入院患者で賄う必要があります。

他の急性期病院からの受け入れを考える場合、まず近くに地域包括ケア病棟を持たない高度急性期病院があることが条件になります。かつ、受け入れる疾患や医療レベルの差、治療プロセスについて双方が細かく共有し信頼関係を構築することが必要になるため、現実的には地域連携パスが運用されているケースなどに限られ、ハードルが高いでしょう。

在宅等からの直接入院を増やすには、①これまで急性期病棟に入院していた疾患を地域包括ケア病棟で受け入れる、もしくは②特養、介護医療院、老人ホーム、在宅療養患者などを直接地域包括ケア病棟で受け入れる、の2つの戦略があります。200床以上の病院であれば、今回の改定は①だけでも対策ができますが、次回以降の改定を見据えると、②にも対応できるような体制を構築することが非常に重要です。

実際に特養、介護医療院、老人ホーム、在宅療養からの入院患者数増加に繋げるためには、「医師」と「地域連携部門(ケアマネ)」それぞれで、施設間の信頼関係が重要になります。

特養や老人ホームといった施設には医師が常駐していないことも多いので、実際にはこれら施設を担当する近隣の病院や診療所の医師と地域包括ケア病棟の担当医師が、お互い顔の見える関係になれるかがポイントです。また、医師同士の仲が良くても、実業務を行うお互いの地域連携部門のスタッフやケアマネに全く面識がなければ、スムーズな調整ができません。これまで地域との関係が薄いと感じる病院は、医師を含む多職種での勉強会や意見交換会を開催するなど、積極的に連携強化を図っていきましょう。

老健との連携は強化すべきか

老健は在宅系施設ではないため、地域包括ケア病棟から退院して老健に入所する患者は在宅復帰にカウントされません。そのため、これまで地域包括ケア病棟の多くは老健との連携に積極的ではありませんでした。今回の改定では、在宅患者支援病床初期加算の見直しが行われ、老健から地域包括ケア病棟に直接入院した場合の評価が、以前の300点から500点にUPしています。

今後、老健との連携は強化すべきです。なぜなら、病院の在院日数短縮や患者の高齢化に伴い、老健でも医療ニーズが大きくなっているためです。実際、2021年度の介護報酬改定では「所定疾患施設療養費Ⅱ」の算定可能日数が連続7日から10日に延び、蜂窩織炎が対象疾患に追加されています。また、入院のため老健退所後、1週間以内で退院して再入所した利用者は、老健側の在宅復帰率や回転率にカウントされません(=新規入所者、新規退所者には含めない)。そのため、例えば「入居者が肺炎や尿路感染症になり、所定疾患施設療養費ではカバーできない場合に、短期的に入院して治療してもらえる病院」は、老健にとって非常に安心できる連携相手となります。地域包括ケア病棟側の在宅復帰率がクリアできる範囲であることが条件になりますが、老健とも積極的な連携体制を構築できると、地域のニーズに応えることができ、患者数増加にも繋がるでしょう。

 

 

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